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TVマン見た「マジで秘境」チベット仏教の村(中編) 歴史に刻まれた「チベット遺産」と異文化の影響

東洋経済オンライン / 2024年7月6日 12時1分

過酷な自然環境の中で「生きる」ことへの強い意志が、その景色に一層の輝きを与えているようだった。

村に到着した頃には、すでに夕方の4時を過ぎていた。陽が落ちる前に、今夜の宿を見つけなければならない。

これまでの旅の経験から言って、田舎に行けば行くほど、保守的な人々が多い傾向があった。こんな辺境の村で、異国の訪問者を迎えてくれる場所などあるのだろうか。不安が胸をよぎる。

しかし、「この行き当たりばったり感が旅の醍醐味なんだ」と自分に言い聞かせながら、村の中へと足を踏み入れた。

ナコ村は、スピティの始まりの村であるカザや、ピンバレー国立公園へのトレッキング客がよく訪れるムド村に比べて、圧倒的に閑散としていた。

人がまったく見当たらない閑散とした村

すでに5分近く散策しているが、すれ違うのはロバや牛などの動物ばかりで、村人の姿は一人も見当たらない。まるで、すべての人間がこの村から消えてしまったかのようだ。

長細い石が多いのが印象的で、狭い石畳の脇には城の石垣のように石が積み上げられて壁を造っている。

民家の造りは土と石を基礎にした長方形で、屋根には茅葺が積まれていた。村のあちこちにチベット仏教の象徴である赤、白、緑、黄、青の5色の旗タルチョが掲げられ、この地に信仰が深く根付いていることが一目でわかる。

しかし、家だけでなく、タルチョさえも老朽化していて、村全体から古ぼけた印象を受けた。

しばらくすると、急に雲が出てきて、どんよりと暗くなってきた。静かすぎる村に物悲しい雰囲気が漂う。まるでホラー映画「八つ墓村」のように、誰かが窓からよそ者をじっと観察しているのではないかとさえ思えた。

「ごっつさん、宿らしきものがないですね」

カナさんも少し不安を感じているのが、声の響きからわかった。

「まぁ、なんとかなるっしょ」

不安を悟られないよう、明るく振る舞い、自分自身を鼓舞した。

それからしばらく村の中を歩くと、4歳くらいの2人組の女の子を見かけた。1人の子は茶色っぽい金髪で、目の色が茶色く、肌全体の色素が薄い。スピティに来てから初めて見る顔つきだ。もう1人は浅黒い肌に真っ黒の目をしている。

「こんにちは、この村の子?」

「人けのない村」で必死の宿探し

茶色っぽい金髪の子が着ている水色のトレーナーはかなり古びていて、少し薄汚れている。

「ねー、お金ちょうだい」

少しびっくりした。インドの都市部にいたときは、子どもたちからよくお金をせびられたのだが、スピティに来てからは一度もそんなことはなかった。ナコ全体が経済的に苦しい状況にあるのかもしれない。

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