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TVマン見た「マジで秘境」チベット仏教の村(中編) 歴史に刻まれた「チベット遺産」と異文化の影響

東洋経済オンライン / 2024年7月6日 12時1分

「お金はあげられないけど、お菓子をあげるよ」

非常用の食料としてバックパックに詰め込んでいた飴を差し出すと、2人は喜んで口の中に放り込んだ。

「ねぇ、この辺に宿とかないかな?」

リアクションがない。どうやら英語が通じないらしい。仕方がないので、寝るポーズをしたり村の方向を指差したりすると、彼女たちは手招きしながら歩き出した。

後ろをついていくと白い壁の小さな家へ案内され、2人はノックもせずに家の中へ入って行った。すると、20代くらいの若い女性が中から出てきた。

「どうしました?」

「この村で宿を探しています。この辺りに泊まれる場所はないですか?」

彼女も英語はあまり得意ではないようだが、何とかこちらの意図は理解してくれたようだ。

「ついてきて」

数分ほど歩くと、民家の前に止まり、真っ黒に日焼けしたロバの世話をしている30代くらいの人のよさそうな男性に話しかけた。

「君たち、宿を探しているの?」

男が英語で話しかけてきた。

「はい。さっきムドからバスでやってきたんですけど、今晩泊まる宿がないんです」

「じゃあ、離れに空き家があるからそこに泊まればいい。お金を少し頂くけどいいかい」

「はい、もちろんです。助かります」

男がここまで連れてきてくれた若い女性に経緯を説明すると、彼女は顔をくしゃっとさせて笑顔を見せた。そして、何も言わずに手を振って家の方へ歩き出す。

俺たちは「ありがとう」と何度もお礼を述べたが、彼女は恥ずかしそうな笑みを浮かべ、そのまま去っていった。助けてくれた村人たちは、決して口数が多いわけではないが、皆、素朴で人のよさが表情から滲み出ていた。

大きなベッドが一つだけの質素な部屋

案内された部屋はお世辞にも綺麗とは言い難かった。土の床の上に麻っぽい布が敷かれていて、砂や土埃で汚れている。

その上に大きなベッドが一つだけあり、誰かが飲んだビールの空き瓶とペットボトルがそのまま残されていた。部屋のドアには鍵もない。

それでも、今夜、雨風をしのげる部屋があるのに内心ホッとした。

「ここでいいかい?」

男が質問する。

「カナさん大丈夫?」

ベッドが一つしかないので気を使って聞いた。

「大丈夫です。ありがとうございます」

男が去った後、「ベッドは広いから端と端で眠ればいい。その辺は安心して」と伝えると、カナさんは少しホッとした表情を見せた。

それから、急いでバックパックの荷物から懐中電灯など必要最低限なものを取り出し、外鍵に南京錠をつけた。

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