豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら 豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら
東洋経済オンライン / 2024年7月6日 18時0分
7月26日公開の映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』。過去の偉人たちが現代で活躍する奇想天外なストーリーと豪華キャストが公開前から話題となっています。その原作者である眞邊明人氏が同じく歴史上の偉人が現代で躍動する小説『もしも豊臣秀吉がコンサルをしたら』を上梓しました。本稿では特別に、その冒頭部分を公開します。
IT企業の会議に出たコンサルがとんでもないことを…
新宿にそびえ立つ高層ビルの最上階─。
IT企業として名高い金田産業の広々とした会議室で、武田倫太郎は上座を見据えた。ひと呼吸置き、その視線の先にいるダブルのスーツに身を包んだ、仁王のような顔の偉丈夫に向けて口を開く。
「あなた方は企業価値の低い会社に高いデューデリ(※)をつけ、本来より安く買ったとして特別利益を出し、決算を粉飾した。違いますか」
(※)買収を検討している企業の詳細を調査し、リスクとリターンを適正に把握すること。デューデリジェンス(Due Diligence)の略
その言葉が終わらぬうちに仁王のような顔が歪み、一喝する。
「コンサル風情がなにを言い出すかと思えば、そんな言いがかりを!」
「金田社長。これは言いがかりではありません。事実です」
「まだ言うか!」
仁王顔の男が叫んだ。すると倫太郎の背後から低い声が響く。
「人の上に立つ者がみだりに取り乱すでない。愚か者めが」
耳にした者すべてを震え上がらせるような威厳に満ちた声に、倫太郎は、臓腑に石を突っ込まれたかのような圧を感じた。この声は、どうやら倫太郎以外には聞こえないようだ。
「この金田産業で、クライアントであるわしに法を犯したなどという誹謗中傷をして、ただで済むと思っているのか!」
金田は大声でわめいた。たしかにクライアントの意向のもと利益をもたらすのがコンサルの仕事だ。とはいえ、この言われようは納得できない。
「この者、将の器にあらず。ただ 、怒りをぶつければ人は従うと思っておる。かの柴田勝家もそうであった。猛将などと呼ばれ浮かれる者、おのれの力のみを過信し滅びる。倫太郎、追い込んでやれ」
背中からの声が倫太郎を後押しする。胃の腑あたりをドンと殴られたような衝撃を感じ、嫌な汗がにじみ出た。
「誹謗中傷かどうかは、買収した会社の価値を冷静に見直してから判断すべきかと」
「必要ないッ、終わったことだ!」
金田は大柄な身体を揺すり、分厚い手のひらでテーブルを何度も叩いた。
「そんなのは監査法人がやることだ! お前の仕事じゃない」
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