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サブカルチャーは時間遡行をどう描いたのか? SF作品から「時間の流れ」について考える

東洋経済オンライン / 2024年7月7日 19時0分

サブカルチャーに描かれた「時間の流れ」について考えてみます(写真:ナオ/PIXTA)

何かを失敗したとき、「時間を巻き戻せたら……」と思ったことのある人は多いでしょう。現実には難しくとも、SF作品に登場する主人公がいとも簡単に過去に跳躍し、自身の失敗や、誰かとのすれ違いを解消しようとチャレンジする姿は、私たちの好奇心を喚起します。

いったいどこまでが科学的に解説可能なのでしょうか? そんなサブカルチャーに描かれた「時間の流れ」について、サイエンスライターの吉田伸夫氏による最新刊『「時間」はなぜ存在するのか』よりご紹介します。

サブカルチャーに見る時間遡行

最近、漫画・アニメ・ゲームなどのサブカルチャーと呼ばれる分野で、「過去に戻ってやり直す」というプロットの作品がかなり頻繁に生み出されています。

「過去改変」とか「歴史改変」と呼ばれるプロットで、主にSF作品として構想されますが、ふつうに考えるとタイムパラドクス問題が避けられません。作家からすると、常識と反する状況が面白いのでしょうが、科学者は、パラドクスの有無がどうにも気になります。

SFの中には、読者や視聴者を幻惑するための仕掛けとして、タイムパラドクスを利用する作品もあります(ネタバレになってしまうので、具体的な作品名は挙げません)。

逆に、主人公が何度も過去に戻っているのに、まるで手品のようにタイムパラドクスを回避することで興趣を盛り上げる作品もあります。ロバート・A・ハインラインの短編小説「輪廻の蛇」は、その究極的な例かもしれません。

ただし、タイムパラドクスをSF的な仕掛けとして積極的に利用するケースは比較的少数であり、多くの作品では、パラドクスから目を背ける、あるいは、パラドクスは(なぜか)起きないことにする――という方法をとっています。近年の日本の作品からいくつか例を挙げましょう。

筒井康隆「時をかける少女」の時間跳躍スキル

過去改変をテーマにした日本の作品でよく知られているのが、筒井康隆の中編小説「時をかける少女」(1967)でしょう。

主人公の女子中学生は、不思議な出来事をきっかけに時間跳躍の能力を獲得し、トラックに轢かれそうになった瞬間、前日に戻って同じ一日を繰り返します。

この時間跳躍は、身体などの物質的存在が時間移動するのではなく、意識だけが過去に飛ばされるので、タイムパラドクスは起きないと思えるかもしれません。

しかし、ヒロインは未来の記憶を保持しており、それを使って翌日の交通事故を回避することができます。もし轢かれそうになるという体験が実際に起きないのならば、なぜそんな記憶を持っているのか説明が付きません。これが、情報に関するタイムパラドクスです。

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