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それでもなぜトランプは熱狂的に支持されるのか 幸福な国は「怪物」を大統領に選んだりしない

東洋経済オンライン / 2024年7月10日 10時30分

このカールソンによるトランプ支持の、一種のねじれた論理からも、いまアメリカが抱える困難な状況が浮かび上がってくる。

では、トランプが映し出す「底流で起きている現象」あるいは忘れられた人々の「絶望」とは、どのようなものなのか。

それはカールソンがいうように、この何十年かアメリカが歩んで来た道にかかわる。トランプ(元来は民主党である)が乗っ取ってしまった共和党叩きをしても、何も始まらない。なぜ、トランプ支持者らがクリントン夫妻やバラク・オバマ元大統領を蛇蝎のごとく嫌うのか。今日の人々の「絶望」は二大政党が「共犯」となってもたらした結果であるからだろう。

経済格差がすべての問題の背景にある

トランプが繰り返し戻ってくるアメリカの、人々のいまのありさまをみてみよう。

今日のアメリカの民主主義が抱える諸課題の根本的な背景は、経済格差である。これがアメリカ知識社会が達した結論である(アメリカ芸術科学アカデミーが建国250年[2026年]に向けて行っている民主主義再構築のための作業が生んだ2つの報告書“Our Common Purpose” [2020], “Advancing a People-First Economy” [2023]参照)。

格差は学歴(大卒以上と高卒以下)、地域(大都市・近郊とそれ以外、沿岸部と内陸)……で広がる一方だ。また、かつては親の収入を超えていった子の世代が、それを超えることができなくなっている問題も起きている。機会の平等や持続的成長といった、アメリカンドリームを支える基本的要素を享受できる人が限られて、「階級社会」が生まれだしている。それを「封建社会」とまで呼ぶ学識者もいる。過去数十年のプロセスを経て、アメリカはアメリカではなくなりつつあるのだ。

格差の実態を至近のデータでみてみよう。

2023年第3四半期のアメリカの世帯資産をみると、上位10%が全世帯資産の総計の66・6%を占めている。このグループの平均世帯資産は650万ドルだから円換算すると10億円近い。これに対し下位50%の世帯資産は全体の2・6%を占めるだけだ。このグループの平均世帯資産は5万ドルだから、750万円程度だ。アメリカが人口10人の国家だと仮定すると、10人の資産合計の7割を1人が握っており、下位の5人の資産は全員分合わせても一人の金持ちの25分の1程度ということになる。やる気を失わせるような格差ではないか。さらに学歴での資産格差をみると、高卒が世帯主の家族は大卒の家族の5分の1ほど、さらに高校中退以下となると10分の1である(The State of U.S. Wealth Inequality, Feb. 05, 2024, Institute for Economic Equity, Federal Reserve Bank of St.Louis.)。

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