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リベラルが勝てない要因は「脳の仕組み」にある 人間の脳は加齢とともに「保守化」していく

東洋経済オンライン / 2024年7月12日 17時30分

人は老化とともに、自らの所属している集団の論理しか受け付けなくなりがちだという(写真:metamorworks/PIXTA)

「年を取るとガンコになる」「理性より直感が優先される」「ダイエットしてもリバウンドしてしまう」。これらの現象は、個人の性格や意思の問題だと思われがちですが、実はいずれも脳の仕組みが関係しているといいます。

「人の脳は賢くなりすぎないようにできている」と語る、脳科学者の中野信子氏の著書『新版 人は、なぜ他人を許せないのか?』の中から、加齢と脳の関係や脳のシステムと思考の関係について解説します。

加齢が脳を「保守化」させる

できることなら、自分と異なるグループ(アウトグループ)の人の考え方も、ただ「アウトグループだから」という理由で排除したりせず、異なる考え方を尊重し、互いを認め合いたいものです。

しかしこれは、脳科学的には難しい問題でもあります。実は、どのような相手に対しても共感的に振る舞い、人間として尊重し、認めていくという機能はとても高度なもので、前頭葉の眼窩前頭皮質という領域で行われています。

ここは25~30歳くらいにならないと成熟せず、さらに、しっかり発達させるためには、相応の刺激(教育)も必要になります。また、重要な部分なのに、アルコール摂取や寝不足といった理由で簡単に機能が低下してしまいます。しかも、その機能が得られるまでには人生の3分の1近い長い時間がかかるのに対し、衰えてしまうのはとても速いのです。

ニュースなどで見る、いわゆる「キレる老人」を典型的なパターンとして思い描いていただけるとわかりやすいかもしれません。老人が相手に有無を言わせず、自分の倫理だけを信じて、直情径行的に行動してしまうのは、前頭葉の背外側前頭前野が衰えているからかもしれません。

一般に、加齢とともに思考が保守化すると言われますが、同じ理由で説明できます。実際は、脳が老化したから保守化したということが疑われるのです。

ここで言う保守化は、政治思想的な保守という意味ではなく、自分が元々持っていた思想の傾向がより純化され、それ以外の意見は自動的に棄却される確証バイアスが働いて、さらに思考が硬直化していく、といったイメージです。

老化とともに、自らの所属している集団の論理しか受け付けなくなってしまうのです。

「理性」は「直感」には勝てない

思想的な保守とリベラルの話も少ししておきましょう。

脳科学的に見ると、理性と直感が対立すると、ほとんどの場合、理性が負けるようになっています。これはリベラルが保守に勝つことが難しい理由でもあります。もっと身近な例で言うと、ダイエットがなかなか成功しないというのは、これと同じ構図によるものです。

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