リベラルが勝てない要因は「脳の仕組み」にある 人間の脳は加齢とともに「保守化」していく
東洋経済オンライン / 2024年7月12日 17時30分
保守の人は安全志向で、自分が得てきたこれまでの成功体験を信頼し、そこから大きく外れることなく生きる方がより賢い(安全だ)と考えています。安全確実な方法をより価値が高いとし、優先する慎重派と言ってもいいでしょう。
一方、リベラルの人たちは、すでに存在している確実なパラダイムに対して、常により新しい別の選択肢がないかを考え続け、ロジックを更新していこうとします。そして、そうした行為自体が人間としてあるべき正しい姿だと考える傾向が強いと言えます。
この両者は、脳科学におけるいわゆる「ボトムアップ」と「トップダウン」のプロセスのせめぎ合いとも言えます。
同様の言い回しは、経営や組織論にもありますが、そこにおける用語と混同しないように注意してください。脳科学では、前頭前野が決定したことに認知的に従うことをトップダウンと呼びます。前頭前野でのコントロールによる「ダイエットすべき」、あるいは「リベラルであるべき」という思考は、トップダウンによるものです。
しかし、トップダウン的思考を行ったとき、実は後から振り返ると、意外に賢い選択がなされていなかった、ということも多いのです。よくありがちな例はダイエットとリバウンドの関係です。
人は前頭前野でダイエットのメリットを思考します。容姿を良くしたい、健康に生きたい、とにかく目標を達成するクセをつけたいなど、自らのあるべき姿を設定して「ダイエットをするぞ」と決めます。すると、本来人間が持っている「食べたい」という本能、つまりボトムアップからの欲求をそれこそ365日、起きている間中、抑制していなければならなくなります。
そしてダイエットのことばかりに脳のリソースを奪われ、他にやらなければならないことはたくさんあるのに気が回らなくなります。すると次第に面倒になり、あるいはあまりの面白みのなさ、つらさに嫌気が差してダイエットは主たる思考の座から追われ、リバウンドしてしまうというわけです。
リベラル、つまり「理想的な社会を作る」「正しくあるべきだ」という思考の制御は、前頭前野で行われています。ダイエットすべきだ、瘦せている方が美しく健康的だ、という思考と、これまでの(古く誤っているかもしれない)方法は否定すべきだ、社会はより正しく変わるべきだ、という思考は、いずれも現実に対して、ボトムアップの思考を殺し、強制するように行われているものです。
極端な例かもしれませんが、1つの思考実験として以下のような状況を考えてみましょう。自分が尊敬する父親から、次のように教えられて育ってきたとします。父は自分に、「困っている人がいたら必ず助けてあげなさい」と常日頃から説き、そう振る舞ってきました。そして、自分もそれに納得しているとします。
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