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リベラルが勝てない要因は「脳の仕組み」にある 人間の脳は加齢とともに「保守化」していく

東洋経済オンライン / 2024年7月12日 17時30分

では、実際にお隣さんが「うちは生活が苦しいから、これから毎日食べ物をくれないか」とか、「お宅にはクルマが余分にあるのだから、うちにも使わせてもらえないか」「洗濯機が壊れたから、好きなときにあなたの家で洗濯させてほしい」などと、要求してきたとしたらどうでしょうか。

父の教えに従うのであれば、隣人の要求に従うことが正しい振る舞いだということになります。しかし、本当にその教え通りに生活を続けていたら、最終的にはこの隣人にすべてのリソースを奪われ破産してしまうおそれがあります。場合によっては、生命の危険を感じることすら起こり得るかもしれません。

脳は「賢くなり過ぎない」ようにできている?

これは、決して個人の意思の力といったような問題ではありません。実際は、人間が人間であり続けるため、脳は前頭前野に従い過ぎないように、つまり「賢くなり過ぎない」ように設計されていると考えざるを得ないような作りなのです。

生きるためには食べなければいけないのに、その本能に逆らってひたすらダイエットを続ければ、そのうち健康を害し、餓死すらしかねません。元々、トップダウンのシステムが弱くなるのが健康な状態で、そのようにできているのです。

その典型は女性と出産の関係かもしれません。女性が自分の生命維持を最優先するなら、子どもを産むという行為は、リスクが高過ぎると言えます。実際に、医療がこれほど発達していない時代には、お産で亡くなる女性も多かったのです。

しかし、それでは種としての人間が絶えてしまいます。だからこそ、トップダウンではコントロールできないような、愛情や性欲、子どもへの愛着などが強くなるように仕組んであるわけです。

「完璧な記憶」は人生をつらいものにするだけ

記憶力も同様です。完璧に記憶でき、忘れない脳があったらいいと思う方もいるでしょう。しかし、記憶は不完全になるように、あたかも設定されているかのようです。

それどころか、都合よく記憶同士を合成したり、書き換えたりすることも行われます。場合によっては、自分の昔の恋人との記憶と、現在の配偶者との記憶が混在してしまう……というような事態も生じたりしてしまうわけですが。

かといって、完璧に記憶できる人が仮にいたとしたら、一体どうなるでしょうか。嫌な思い出を忘れることもできず、周囲に合わせるための都合のよい記憶の書き換えもできず、かなりつらい人生を送ることになるでしょう。

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