安易に「共生社会」語る人に伝えたい"危うい盲点" 一方だけが得をする「寄生」になっていないか
東洋経済オンライン / 2024年7月14日 13時0分
福祉の世界では、「共生社会」という用語が当たり前のように語られる。
介護や障がい者福祉の現場では、施設の職員さんたちが、利用者さんのよりよい生活を支えようと頑張っている。だが、ここでも同じ疑問が浮かぶ。いったい何が職員さんにとっての利益なのだろう。
給与はメリットだ。しかし、それを「共生」というのなら、あらゆる経済活動はすべて共生であり、政府や中間団体がこの言葉を振りかざすまでもなく、共生社会はすでに実現していることになる。
そうではなく、利用者さんと関わることで感じられる、福祉従事者のメリットだ。それは、おそらく、お年寄りや障がい者の笑顔だったり、利用者家族からの感謝の言葉だったりするのだろう。人の役に立てているという実感、喜びは、何物にも代えがたいものだ。
だがここでもまた、善意と良識に満ちた人間の影がちらついて見える。現実には、重労働や精神的負担に苦しみ、報酬も不十分で将来不安におびえている職員さんが大勢いるからだ。
福祉従事者はサービスを与えるだけではダメだ。利用者さんの心に寄り添い、伴走し、共に生きることを求められる。人の嫌がる仕事でも、仮に辛い仕打ちを受けても、笑顔での受け答えが求められる。こんな仕事はそう多くないのではないか。
もし、彼女ら/彼らが生きるために、安価な給料に甘んじて、利用者さんを支えなければならないとするならば、これもまた、<寄生という名の共生>に限りなく近づいてしまう。
高額の所得や収入を手にする人たち。高齢者や障がい者への献身を求められる福祉従事者たち。異なる立場にありながら、批判者からは厳しい目で見られがちな両者だが、じつは、いずれも<寄生という名の共生>の「被害者」なのかもしれない。
「みんなちがって、みんないい」の先は分断社会?
第4回(『娘が流すSnow Manに私が「日本の未来」感じた訳』)でも論じたように、いまの日本は、生活保護利用者をはじめとする<弱い立場に置かれた人たち>への共感が成立しない社会になっている。それは、ある人たちが一方的な負担者となり、他方が一方的な受益者、すなわち「寄生者」となることへの違和感の表明ではないか。
そうだとすれば、「みんなちがって、みんないい」が行き着く先は、自分とは異なる価値を持つ人たち=他人への無関心が蔓延し、困っている人たちを置き去りにしてしまうような「分断社会」なのかもしれない。
当たり前のことを言おう。弱い立場に置かれた人たち(=「弱者」)は、この社会を共に生きる仲間なのであって、不幸な人たちではあっても社会の寄生者ではない。そんな存在にしてはならない。
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