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トランプもバイデンもイスラエルを支援する理由 聖書と冷戦が生んだ米国とイスラエルの同盟

東洋経済オンライン / 2024年7月17日 9時0分

アメリカはなぜ、保守派の共和党もリベラル派の民主党も、イスラエルをこれほど支援するのでしょうか? それは、アメリカとユダヤ国家イスラエルが「特別な関係」にあるからです。「特別な関係」とは特別な同盟関係のことです。

「特別な関係」という言葉をアメリカとイギリスの同盟関係に使って有名にしたのはイギリスのチャーチル前首相です。アメリカとイスラエルの「特別な関係」に初めて公式に触れたのはチャーチルを尊敬していたケネディ米大統領でした。

アメリカとイスラエルの特別な関係の基盤は何なのでしょうか? 「聖書」です。古代のユダヤ人が編集した「旧約聖書」(ヘブライ語聖書)とキリスト教の「新約聖書」(ギリシア語聖書)です。

旧約はユダヤ教とキリスト教両方の聖書、新約はキリスト教だけの聖書。アメリカとイスラエルの特別な同盟関係の基盤にあるのは、ユダヤ・キリスト教の宗教・政治文化の共有です。

聖書の建国神話と黙示思想

「旧約聖書」の「出エジプト記」によれば、古代イスラエルは、神に選ばれたユダヤ人がエジプトのファラオの専制支配を逃れ、自由を求めて神の「約束の地」につくった国です。

現代イスラエルの建国物語は、この「出エジプト」神話をなぞっています。17世紀に、北米大陸に入植したキリスト教プロテスタントのピューリタン(清教徒)も「新大陸」に自由な「新しいイスラエル」をつくる宗教的な熱情に突き動かされていました。「約束の地」の「自由の物語」は、独立宣言や合衆国憲法の基盤を成し、アメリカの国民的アイデンティティやリベラルな価値観を形づくっています。

旧約の「ヨシュア記」は、「神の選民」が「約束の地」で自由を得るまでに起きた先住民の殺戮や支配の過程も克明に描きます。まるでアメリカ先住民やパレスチナ・アラブ人の苦難を先取りしているかのようです。

トランプ支持者に多い保守的なキリスト教福音派は、「新約聖書」の「ヨハネの黙示録(もくしろく)」などを解釈した聖書預言、終末論の影響を受けています。「世界の終わり」に、救世主(メシア)イエスが聖地エルサレムに再臨し、善と悪の最終戦争(ハルマゲドン)を経て「千年王国」(ミレニアム)が出現する、とする黙示思想です。荒唐無稽なファンタジーのようですが、黙示思想はアメリカの政治文化、大衆文化に広く、深く浸透しています。

アメリカとイスラエルの関係を、中東の地政学や安全保障を抜きに語ることはもちろんできませんが、両国が「特別な関係」と呼ばれるのは、聖書の伝統に基づく宗教・政治文化、建国神話・物語を、指導層から広く大衆まで共有していることが大きいのです。

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