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トランプもバイデンもイスラエルを支援する理由 聖書と冷戦が生んだ米国とイスラエルの同盟

東洋経済オンライン / 2024年7月17日 9時0分

冷戦で強調された「ユダヤ・キリスト教」、アメリカの偏愛

「ユダヤ・キリスト教」と、ふたつの一神教をひとくくりにする思想は、アメリカが無神論のマルクス・レーニン主義国家ソ連と対立した冷戦期に強調されました。宗教のような伝統文化は固有で本質的なものに思えますが、その時々の政治的な都合で「発見」されたり、強調されたりもします。聖書の編集そのものも、古代の政治権力の野心と密接に関係していたらしいことが、近年の聖書考古学で指摘されています。

両国の「特別な関係」を支えているのは、超大国アメリカの側が聖地のユダヤ国家に抱く「偏愛」です。イスラエルの対米観は意外にドライです。これほど緊密な同盟関係にありながら、日米安全保障条約のような正式の二国間条約がありません。

「聖書の同盟」の背景をたどると、日本の同盟国アメリカの、普段はあまり意識されない不思議な「国のかたち」が見えてきます。日本は一神教の信徒が人口の2%にも満たない世界でもまれな国。多くの日本人にはわかりにくい、アメリカの独特な宗教・政治文化が浮かび上がります。

日本人とユダヤ人の歴史的、文化的な状況はまったく似ていないように思われます。けれども、西洋キリスト教文明の部外者の中で西洋近代に最初に適応した数少ない「成功したよそ者」(シロニ・ヘブライ大教授)という点では共通点があります。私や周囲の経験では、日本人が海外で仲良くなる外国人にはユダヤ系の人々が少なくありません。

現代世界のユダヤ人

日本人は大多数が日本に住み日本語を話します。ユダヤ人は古来、世界中の国・地域に「異教徒」「ユダヤ人」として住んできました。言語もさまざまです。イスラエル以外ではヘブライ語を話せないユダヤ人が普通です。現代のユダヤ人の大半はニューヨークをはじめアメリカとイスラエルにほぼ半々の割合で住んでいます。

ユダヤ人の人口は、定義により多少の増減がありますが、多めに数えて1600万人程度と推計されています。ヒトラーのナチスがドイツで政権を握った1933年に約1530万人でした。100年近くかけ当時の人口を回復したかどうかという状況です。当時約900万人とされたヨーロッパ・ユダヤ人の3分の2、約600万人が虐殺されました。その影響の凄まじさがわかります。

世界人口は2023年に80億人を超えました。人類の過半数がユダヤ教を母胎とするキリスト教、イスラム教という一神教の信徒であるか、その文化圏で暮らしています。ユダヤ人は世界人口の約0.2%。でもノーベル賞受賞者の20%を超えるといわれます。相対性理論のアインシュタイン、『変身』『城』の小説家カフカ、精神分析のフロイト、『資本論』のマルクス。さかのぼれば『エチカ(倫理学)』の哲学者スピノザ、現代では「未知との遭遇」「シンドラーのリスト」の映画監督スピルバーグや世界的投資家ソロス……と、きりがありません。ブリンケン米国務長官、エマヌエル駐日米大使もユダヤ人です。現代の国際政治で最も有名なユダヤ人はウクライナのゼレンスキー大統領でしょう。

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