「入ることがゴール」と若者が考えてしまう理由 自分が選択した人生をいかに肯定できるか
東洋経済オンライン / 2024年7月18日 13時0分
舟津:間違いないです。大学受験で人生が決まると信じ込んで、頑張りきって、「よし、自分は幸せのルートに乗っている」と思って入学してみると、無条件で幸せになれるような場所はどこにもない。拍子抜けするでしょうね。
鳥羽:実際それで大企業を辞めた卒業生もいますし、東大・京大を辞めた子もいます。たぶん、受かったら幸せが待っているような気持ちがどこかにあったんでしょうね。
舟津:東大だと、「自分が東大生だと思うだけで幸せであり続けられる」って人はいるみたいですけど(笑)。あえて言うと、だいたいキャンパスライフなんて期待したどおりにはなりません(笑)。サークルや遊びなど、想像通りの平凡な楽しみは享受できる。でも、それは別にどの大学でも同じようなものですし、入学した時点で圧倒的な手応えを得られるわけがないと思いますね。
鳥羽:それなのに、それを期待して入る子がいるんですよね。頑張った見返りがちゃんとあるはずだって信じている。でも、それは受験産業や学校に責任があるとも思いますけどね。
舟津:そうなんですよね。受験産業や学校は、どうしてもその内情の発露をタブー視します。でも、経営学はそのタブーをばらす学問でもあります。企業側はビジネスとして、こういう構造であなたたちの欲望を掻き立てているんだよと。
鳥羽:子どもには、大人の考えていることが最初からうすうすバレていますからね。うすうすバレてるけど建前だけはあるということが、大人と子どもの関係を守っている側面もあるわけですが。ただ、こういう経営の話は、ある程度の年齢以上になればそれを伝えたとしても幻滅することはないし、むしろ自分のポジションを確認するために必要なことだったと感じる子もいるでしょう。
学問を信じる力が自分を信じる支えになりうる
鳥羽:今の教育のお話に関連するものとして、舟津さんの本を読んでもう一ついい言葉だなと思ったのが、「内定がなかったとてどうにかなるのだ、という余裕を持つために、知性へのゆるぎない信頼を持つために、教育がある」というものです。この点について詳しくお話をお聞かせ願えますか。
舟津:この一文では、デカルトの「我思う、ゆえに我あり」という著名なフレーズをイメージしました。このフレーズを解説した本に「あらゆるものを疑った末に、自分の思弁だけは疑いようがなかったという、知性への絶対的信頼を表現している」という解釈があり、とても心に響いたんです。哲学的に深く考えていくと、あらゆるものが疑わしくなる。しかし、考えている自分自身の存在だけは確信できうる。それが知性へのゆるぎない信頼なんだと。
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