「入ることがゴール」と若者が考えてしまう理由 自分が選択した人生をいかに肯定できるか
東洋経済オンライン / 2024年7月18日 13時0分
鳥羽:学校の話でいうと、受験直前に生徒たちと「頑張れ」って教室で握手をしただけで、学校から注意された先生もいるんですよね。「女子生徒と握手するなんて」「今の時代は男子生徒でもダメだ」とか。でも、その先生は関係性ができているからいいと思ったんですよ。励まされた子も多いと思います。でも、学校からは注意されてしまった。
舟津:純粋に「頑張れ」と握手することに性は介在しないのに、それを問題視することで、かえって生徒にも先生にも、「これって性的なのかも」と感じさせてしまう。真面目な人ほど、真摯にそう苦悩すると思います。
鳥羽:そうなんです。真面目な人ほど「純粋な『頑張れ』とかあるのか?」とか考え出してしまって、変な反省が生まれてしまう。何でもかんでも問題にする風潮が強まっていますが、結局のところは事なかれ主義です。
判断力を身につけるために学問や教育がある
舟津:頑張れは原義がよくないとか、かえって追い詰めるとか、よく言われますよね。頑張れは頑張れだろうがと(笑)。唯言に囚われるんじゃなくて、頑張れって言ってくれた相手を見てほしいですね。それらは作られた規範であって、実は誰も本気でそんなこと思っていない。本気で思ってないのに、「誰かが気にするかもしれない」と判断を留保する。だとしたら、自分の中でそれが判断できるようになるために、学問や教育があるべきです。異性の先生に握手されたとして、異性だからとかじゃなくて、本当に生徒を励ましたい気持ちかどうかを判断できるように成長していってほしい。
鳥羽:そうですね。ただ、この状況が元に戻ることはないんでしょうね。空気という名の監視社会がどんどん強くなっていくでしょう。
舟津:たしかに。巧妙に空気化された監視社会というか、何から何まで監視しようという風潮は、ますます加速していくでしょうね。
でもそれは、ぼんやりと全体を覆う空気でしかないとも思うので、個々人が互いに理解し合っている関係のあいだならば何とかコントロールできて、違った空気の中で呼吸ができる気もしています。ビジネスをはじめ社会が設定した欲望にまみれ、いかなる場面でも演技を求められる社会で、自分の欲望をいかに発見し、生き方とどう呼応させていくかがカギになりますし、我々はそのために学んでいくべきだと思っています。
鳥羽 和久:教育者、作家
舟津 昌平:経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
真面目な人ほど「就活」で損する演技社会の「茶番」 会社が求める演技をできる人が評価される現実
東洋経済オンライン / 2024年7月17日 9時0分
-
なぜ先生は学生を「怒れなく」なっているのか 教育現場を弱体化させている1つの「妄想」
東洋経済オンライン / 2024年7月16日 14時0分
-
「マウントを取る道具」として広まる歪な論文信仰 専門家は「思考と責任」の便利な外注先ではない
東洋経済オンライン / 2024年6月28日 11時30分
-
Z世代が囚われる「第三者目線」という強迫観念 メリットなき個人行動の「コンプライアンス化」
東洋経済オンライン / 2024年6月27日 11時0分
-
なぜ大人は若者に「合わせる」ようになったのか 成熟という価値観を喪ったデオドラント化社会
東洋経済オンライン / 2024年6月26日 11時0分
ランキング
-
1マクドナルドが「ストローなしで飲めるフタ」試行 紙ストローの行方は...?広報「未定でございます」
J-CASTニュース / 2024年7月17日 12時55分
-
2セルフレジで客が減る? 欧米で「セルフレジ撤去」の動き、日本はどう捉えるべきか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月18日 8時10分
-
3「レイバン」メーカー、人気ブランド「シュプリーム」を15億ドルで買収
ロイター / 2024年7月18日 8時34分
-
4東証、一時1000円近く下落 円高進行で輸出関連に売り
共同通信 / 2024年7月18日 11時58分
-
5永谷園、MBO成立=今秋にも上場廃止
時事通信 / 2024年7月17日 20時36分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください