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大谷翔平が「世界一」と紹介"もちもち"ヨーグルト 岩手・岩泉ヨーグルト 誕生秘話と苦難を聞く

東洋経済オンライン / 2024年7月22日 10時0分

しかし、今回も大手がひしめくスーパーのヨーグルト売場で販売棚を確保するのに苦戦。1日に100個しか売れない日もあった。

「なんとか販売量を増やし工場の稼働率を上げなくては」。

山下さんが活路を見出したのが、大ロットの業務用というマーケットだった。ヒントになったのは、都内ホテルの朝食ビュッフェ会場で目にした、ヨーグルトの入った大きなボウル。そしてホテルスタッフの「いちいちパックから移すのが面倒」という言葉。

そこで大容量のパッケージを探しにホームセンターへ行ったところ、見つけたのが丈夫なアルミパウチだった。

岩泉ヨーグルトは“後発酵”という製法で作るため、容器に充填してから33~35度の低温で20時間発酵させる。アルミパウチを使った製造を始めて数日後、工場のスタッフから「前よりヨーグルトがもちもちしている!」と報告を受けた。食感の変化だけでなく、生乳の甘みがさらに際立っていた。

「後発酵のヨーグルトにとって、アルミパウチはいわばヨーグルト工場。岩泉ヨーグルトの味を決定づける要素になりました」。

この新生岩泉ヨーグルトを携えてホテルを営業に回り手応えをつかむと、岩手県内のスーパーで試食販売する機会を得て、自ら店頭に立った。

食感が評判となり、取扱店舗が増加。当初の2kg入りに加えて1kg入りも投入し、売上は右肩上がりに伸びていった。町内の購入者も増え、町の特産として浸透し始めた。

黒字から一転。台風被害で存続の危機

就任から6年後には、就任時に抱えていた2億8000万円の累積赤字を解消。町内の酪農家から「牛を育てている甲斐がある」など感謝の言葉を掛けられることも増えた。

ところが工場を増設し、勢いに乗っていた2016年8月末。「まさにこれからってとき」(山下社長)に、台風10号の影響で岩泉町に記録的な大雨が降り、工場の裏を流れる河川が氾濫、町内で24人の犠牲者を出した。

この大雨で工場の敷地一帯が3mほどの高さまで水没し、壊滅的被害を受けてヨーグルトの生産は停止。「さすがにもうだめかもしれないと思いました。工場の泥出し作業をする社員たちにいつ、会社を閉めると言い出せばいいのか、そんなことを考えていました」。

全国からの激励で再建を決意

心が折れかけた山下さんを再び立ち上がらせたのは、岩泉ヨーグルトの復活を待ち望む全国からの声だった。全国から1,000通以上の手紙が届き、県内のラジオ局にも山下さんや社員に宛てた応援のメッセージが寄せられた。

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