「大学の友だち」は一生の友だちになりうるか Z世代を通して見えてくる「友だち作り」の変化
東洋経済オンライン / 2024年7月23日 11時30分
若者と接する場面では、「なぜそんな行動をとるのか」「なぜそんな受け取り方をするのか」など理解しがたいことが多々起きる。
企業組織を研究する経営学者の舟津昌平氏は、新刊『Z世代化する社会』の中で、それは単に若者が悪いとかおかしいという問題ではなく、もっと違う原因――例えば入社までを過ごす学校や大学の在り方、就活や会社をはじめビジネスの在り方、そして社会の在り方が影響した結果であると主張する。
本記事では、著者の舟津昌平氏と文芸評論家の三宅香帆氏が、Z世代を通して見えてくる社会の構造について論じ合う。
大学の友だちは一生の友だちになりうるか
三宅:『Z世代化する社会』で描かれている若者たちは、舟津さんが大学の先生ということもあって、大学生が中心ですよね。私も大学で非常勤講師をやっているので、とても共感しながら拝読しました。
舟津:ありがとうございます。
三宅:個人的には、モバイルプランナー(携帯のプラン変更や乗り換えを営業する仕事)に学生時代を捧げた大学生のお話が特に面白かったです。というのは、ここ10年くらいの若者論では、『友だち地獄』という本に描かれているような、友だち関係に縛られる若者の話が主流でした。ただこの本では、友だち関係とビジネスの論理が絡み合ったZ世代的友だち関係が書かれていますよね。
それこそモバイルプランナーであったり、友だちからの「株価」を気にしたり、ソーシャルメディアで友だちを管理したり。友だち関係の基盤に、ビジネスの論理が根を張っている。ただ、もし今私が大学生だったら、ここから抜け出すのは難しいとも思うし、もし学生たちがこれに悩んでいたら、どう声をかければいいか、「う~ん」と考えながら読んでいました。
舟津:三宅さんがおっしゃったような話を「同業者」ともよく話すんですが、この前ショッキングな話を聞きました。学生たちが「大学のときの友だちは一生の友だちになりうるか」っていう話をしていたらしいんですよね。普通なら「なるだろう」と思うじゃないですか(笑)。
三宅:私たちの世代感覚かもしれませんが、大学でならなきゃどこでなるんだ、と思ってしまいます。
舟津:その先生も、なぜまずそうした問いを立てるのか、と最初は思ったみたいです。でも、学生側の話をよくよく聞いてみると、学生たちに「大学の友だちは単位を取るための友だち」という感覚があるのだと。つまり「単位を取るためにつながっておかないと困る」という理屈が前提の関係だから、「一生の友だちになれるのかな」と言い出すんです。
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