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「大学の友だち」は一生の友だちになりうるか Z世代を通して見えてくる「友だち作り」の変化

東洋経済オンライン / 2024年7月23日 11時30分

三宅:今って、私生活ですらビジネスの論理になりやすい時代というか。労働時間は10年前に比べたら減っている企業も多いのに、その時間が結局SNSや副業といった、ビジネスの論理で動いているものに置き換わっているにすぎない気がして。仕事以外の人間関係をどうやって作るのか、リスクをさらせる場所をどうやって作るのか、若い人だけでなく年齢を重ねても悩んでいることだと思います。

舟津:三宅さんが書かれた『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』もそういうテーマですよね。ここ10年は残業の時間が減っていて、それこそ余暇が生まれてもよさそうなのに、24時間働かされているような感覚を抜け出せない。もし定時で仕事を終えたとしても副業やリスキリングのことも考えましょうねとか、家庭でも家事や育児が仕事のように感じると。そう思ってしまうと、目的のない読書はできなくなっちゃいますよね。読書をするにしても副業とかリスキリングの本を読まざるをえなくなるというか。

三宅:そうなんですよね。ビジネスの論理で考えると家事や育児も効率的にできるという考え方もありますが、言っていることはすごく正しいし、うまくいくならいいとは思いつつも、すべてをビジネスの論理で考えると、どこかにリスクというか弱さをさらせる場所がなくなっちゃうようにも思うんですよね。

舟津:ビジネスの論理は、より楽に、よりコストを減らすという意味で、間違いなく人間の生活を豊かにしてくれるものです。その一方で三宅さんの本が指摘していたのは、ビジネスの論理は「効率化によって空いた時間の使い方までは教えてくれない」ということですよね。効率化の先には、さらなる効率化しかない。その結果、全部仕事になってしまう。ビジネスの論理だけでは余裕はなくなるばかりです。

ビジネスに不要なノイズを楽しめるか

三宅:ただ難しいのは、ビジネスの論理は基本的には合理的なので、本書に書かれている学生さんたちの言っていることが間違っているとは思わないんです。もし、自分がこの時代に学生だったら、同じように考えるだろうなという事例がたくさん出てきます。もちろん、モバイルプランナーだけに学生生活を捧げるのは違和感を覚えてしまいますし、合理的な選択だけが正しいのかと疑問に感じる部分もあります。でも、そのことを若い世代にどう伝えたほうがいいのか。考え込んでしまいますね。

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』では「ノイズが必要」とは書いていて、それは実体験としてもそうだと確信しているんですけど、若い世代にそれが伝わるのかな、と不安に感じるのも事実です。それこそ「なぜ、人生に友だちは必要なのか」みたいな話と同じかもしれません。自分の場合は、身のまわりにいる人が全員仕事のつながりによる人間関係であったら、心許なさを覚えてしまう。仕事のノイズとなるような人が身のまわりにいてくれるほうが、自分の豊かさが増すと思うんです。

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