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「大学の友だち」は一生の友だちになりうるか Z世代を通して見えてくる「友だち作り」の変化

東洋経済オンライン / 2024年7月23日 11時30分

舟津:「ノイズ」という表現、すごく面白いし的確ですね。かつ、ノイズを楽しむのは熟達した人の楽しみ方でもあるので、若者には難しいというのもわかります。

おっしゃるとおり、学生一人ひとりの話を聞くと筋が通っているんですよね。だから、決してつじつまが合わないことをやっているわけではない。一方で、引っかかるところがあるのはたしかで、多くの人が「うまく言語化できないけど、なんか違う気がするな」と感じているはずなんです。

舟津:その違和感の一つが、ビジネスの論理以外はないのか、というところで。まさに「ノイズ」がない。「大学のときの友だちは一生の友だちになりうるか」という問いも、大学の中に友だちとだべるようなノイズがない都市型キャンパスだからこそ出てくるという事情もあって、その余白をもつことが許されなくなっている。

三宅:それはすごく思います。例えば都市型キャンパスの多い東京には、京都の鴨川的な空間が全然ないんですよね。同じような自然豊かな公園である新宿御苑も、素敵ではありますが有料ですし、コロナ禍のときは予約が必要でびっくりしましたよ。

舟津:この前、友人の家族と京都で会ったとき、5歳くらいの子が「鴨川行きたい! 鴨川行きたい!」って言ってました(笑)。鴨川の何が子どもをそんなに惹きつけるんでしょう(笑)。でも、そうした空間の有無は大きな要因かもしれないですね。

ノイズは自分の知らない可能性に気づかせてくれる

三宅:鴨川でも大学の食堂でもいいですけど、大学生にとって、やっぱり「だべる」ことができる空間は必要だと思います。結局、本も一緒で、本にアクセスできるある程度大きな図書館とか書店がないと、読んでみようとはならない。だから、ノイズが発生しやすい空間というのは確実にあるはず。東京だと、会社みたいなキャンパスも多いなと感じます。

舟津:近い話をこの前、知り合いともしたんですよ。京都って本当にノイズのある、雑味のある街なんです。センシティブな表現かもしれませんが、フーコーが『狂気の歴史』で述べたように現代というのは、障がい者の方が街から消えた時代なんだと。つまり、効率化やデオドラント化のために障がい者を隔離して見ないことにした。でも、京都ではそういう人たちが今なお街に溶け込んでいて、分け隔てがない。

三宅:それは京都に住んでいてすごくわかります。

舟津:自分と異なる人というのは、ある意味でノイズです。でもだからこそ、いろんな可能性に気づける。「なるほど、世の中にはいろんな人がいるわけやな」と。ノイズが必要だと言える主たる理由の一つですね。多様性に気づくための、自分の知らない可能性を知るためのきっかけなんだと。

(7月24日に配信される第2回に続く)

三宅 香帆:文芸評論家

舟津 昌平:経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師

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