現代社会では「自分らしさ」が不要とされる理由 ビジネスの論理に飲まれないための「ノイズ」
東洋経済オンライン / 2024年7月25日 11時0分
若者と接する場面では、「なぜそんな行動をとるのか」「なぜそんな受け取り方をするのか」など理解しがたいことが多々起きる。
企業組織を研究する経営学者の舟津昌平氏は、新刊『Z世代化する社会』の中で、それは単に若者が悪いとかおかしいという問題ではなく、もっと違う原因――例えば入社までを過ごす学校や大学の在り方、就活や会社をはじめビジネスの在り方、そして社会の在り方が影響した結果であると主張する。
本記事では、前回、前々回に続いて、著者の舟津昌平氏と文芸評論家の三宅香帆氏が、Z世代を通して見えてくる社会の構造について論じ合う。
「生き残る条件」という強迫観念
舟津:学生たちを見ていると、「社会を生き抜くためには、こういう条件を満たさないといけない」という強迫観念に囚われている人たちが多いようには思います。
この原因は大きく2つあると思っていて、1つ目は拙著でも触れたように、反実仮想ができないから。つまり、「もし○○の条件を満たしたら/満たさなかったら」の両方のルートを現実で経験することができないからです。
例えば就活では、約9割の人がなんらかのインターンをしていると言われています。なぜなら、インターンに参加しないと受からないと思っているから。でもこれって、典型的な誤った推論なんですよ。内定を取った人はインターンに行っているから、自分も行かないと内定がもらえない、っていう。「すべての犯罪者はパンを食べていた」という類の話と同じです。
もちろん、自分だけ損するのは嫌だから、条件を捨てる勇気が出ないというのはわかります。でも、条件ってどんどん増えていくんです。内定を取った学生はみんなインターンに参加していて、バイトしていて、留学に行っていて、授業は真面目に出ていた、というように、学生を苦しめる「条件の誤認」が重なっていく。みんなそれらをやってるから自分もやらないと、っていう条件は経時的に増え続けるわけです。
舟津:2つ目の原因としてSNSの影響も大きいと思っていて、そういう条件がはっきり可視化されるツールになっている。「この人はあれもこれもどれもやってるから、成功者なんだ」と、自分にもそれらが全部揃ってないとそうなれないような錯覚を起こしてしまう。
三宅:SNSって、努力を見せるツールとして使っている人も多いですからね。就活だと、オープンチャットで、「ESでこういうことを書きました」とか「面接ではこう答えました」とか情報をかなりシェアし合っている。そういうものを見ていると、「あれをしなきゃ、これもしなきゃ」と余計に思ってしまうのはよくわかります。
本当に必要な条件はごく限定的
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