「日銀利上げ」の確率を過小評価すべきではない 「高圧経済」完全脱却を市場に納得させられるか
東洋経済オンライン / 2024年7月26日 19時0分
日本銀行は3月19日、マイナス金利政策とYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)を撤廃した。政策金利は▲0.1%から0.1%に0.2%ポイント利上げされた(実際には▲0.1%のマイナス金利の適用対象は全体のわずかであり、日銀の各種貸出制度の金利は0%から0.1%に引き上げられたので0.1%ポイントの利上げと呼ぶのが実情に近い)。
長期金利は1%超が定着
また、短期金利だけでなく長期金利(10年物国債金利)を操作対象としていたYCCが撤廃されたことで、1.0%の長期金利の上限のメドはなくなった。実際、月間約6兆円の買い入れは撤廃前後で変わっていないにもかかわらず、3月の撤廃当時0.7%台だった長期金利は1%を上回るようになっている。
このように超金融緩和から政策正常化に向けて最初の一歩を踏み出した日銀だが、円安は止まらなかった。
3月19日時点で149円台だったドル円レートは4月下旬には160円近くまで円安が進行し、4月下旬から5月にかけて約9.8兆円という史上最大規模のドル売り円買いの市場介入が行われた。介入後は154円付近まで円高になったものの、その後再び円安が進み、6月下旬には160円を突破、7月に再び介入が実施されたとみられる。足元では150円台前半の推移となっている。
日銀が政策正常化に踏み出したにもかかわらず、円安傾向が続くのはなぜだろうか。
よく聞く説明は「日本の金利が上昇したといってもわずかであり、日銀は緩和的な金融環境を続けると言っている。日米の金利差は大きくは縮小しない」というものである。
ただ、アメリカでは9月利下げの観測が強まっており、為替に影響力が大きいとされる2年物金利は6月FOMC(連邦公開市場委員会)直後の4.8%付近から4.5%付近に低下している。その中で介入が必要なほど円安が進行したという事実をどう捉えればいいのだろうか。
日本に限らず先進国の中央銀行総裁は為替に言及することを避ける。その理由は、①為替が金融政策の目標でないこと、②為替が金融政策でコントロールできないこと、の2点である。どちらも正しい。
ただ、それは金融政策が為替に影響を与えないことを意味しない。そもそも為替とは2つの通貨の価値の交換であり、通貨の価値に金融政策が影響を与えることは自明だ。為替は金融政策で自在にコントロールできるものではないが、影響を与えるのは間違いない。
その際、重要になるのは金融政策のスタンス、つまり政策の方向性である。この点、「高圧経済」脱却をまだ市場に印象付けられていない日本と、とうの昔に脱却した欧米との違いは鮮明である。その差が円安を招いている。
高圧経済脱却の鮮明化がカギ
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