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生成AIへの取り組みでアップルの歯切れが悪い訳 協業するオープンAIとの間にも微妙な距離感

東洋経済オンライン / 2024年7月30日 17時0分

「Copilot+PC」と名付けられたこの新製品の特徴は、生成AIを、クラウド経由だけでなく、PC端末上でも利用できる点です。つまり、インターネットにつながっていなくても、回線が遅い状態であっても、生成AIを利用できるということです。

スマホのOSとして高いシェアを占めているアンドロイドを持つグーグルに対して、マイクロソフトはPCのOSにおいて、ウインドウズで高いシェアを占めています。だから、マイクロソフトは主戦場をPCにしているのでしょう。

マイクロソフトにとって、PCは仕事のためのツールです。インターネット回線が頼りない状況でも、ストレスなく生成AIを使えるようにして、仕事の生産性を上げる。そんな道具としてのPCを考えた結果、Copilot+PCという形に到達したのだと考えられます。

エヌビディアのGPUだけでなく、クアルコムのNPUも重要性を増す

Copilot+PCの要となっているのは、生成AIの深層学習(ディープラーニング)に使われるニューラルネットワークの処理に特化した、NPU(Neural Processing Unit)と呼ばれる半導体です。Copilot+PCに搭載されるNPUは、アメリカのシリコンバレーではなく、その南にあるサンディエゴを本拠地にするクアルコムが開発したものが採用されています。

クアルコムはスマホ向け半導体の世界最大手です。過去にはアップルと特許の使用料をめぐって法廷闘争を繰り広げたこともありますが、両社は2019年に和解に至りました。

2023年末、アップルは、クアルコムからの半導体調達の契約を3年間延長しています。アップルとしては、おそらく忸怩たる思いがありながらも、背に腹は代えられない状況なのではないでしょうか。

生成AIの開発競争が過熱していく中で、クアルコムのような大手半導体メーカーが自分たちの技術力と存在感を訴求していくのは必然の流れでしょう。

生成AIでは、GPU(Graphics Processing Unit)という、高速での並列計算を得意とする半導体を製造するエヌビディアに注目が集まり、時価総額も急成長して上場企業で世界トップにもなりましたが、今後はエヌビディア一強状態の半導体業界に変化が生じるかもしれません。

マイクロソフトが、Copilot+PCの発表を、あえてオープンAIの発表会と切り分けたことの意味も考察してみましょう。

マイクロソフトはオープンAIに多額の出資をしていますが、もしかすると、状況次第では、自社の生成AIである「コパイロット」のブランディングを確立させた後、オープンAIとの提携を縮小する思惑があるのかもしれません。

競争が激しい分野だけに、人の移動と流出、組織間の関係性は、今後もめまぐるしく移り変わっていくため、常に情報をアップデートし続ける必要があります。

山本 康正:ベンチャー投資家、京都大学経営管理大学院客員教授

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