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89歳の母を見送った家族に残った「清々しい記憶」 悲しみのかわりに残った"かけがえのないもの"

東洋経済オンライン / 2024年7月31日 9時0分

実際に長野や東京を直撃すると思われた台風は、なぜか進路を関西方面に急に変え、通夜と告別式ともに無事に行われた。原山さんは「かあちゃん、すげぇー。台風の進路を変えちゃった」とも、山口さんに送信していた。

「今振り返ると、実家での5日間はかあちゃんの体や、私の感情の変化などを文字にして、山口さんにそのつど伝えることで、私自身にも言い聞かせつつ、その死を少しずつ受け入れられた気がします」(原山さん)

看取り士という第三者が与えられる気づき

日本看取り士会の柴田久美子会長は、コロナ禍で看取りが激変したという。

「看取り士は従来、亡くなる前に家族が肉親の体に触れながら、楽しい思い出話に花を咲かせることをお勧めしていました。ですが、大半の老人施設や病院が面会謝絶になり、そうした時間がとれなくなりました。結果、ご本人が亡くなられてから、看取り士が病院やご自宅に呼ばれることになったんです」 

その代わりに原山さんのように自宅でご本人を抱きしめ、一定期間を語り合いながら過ごすことで、残された家族にとっての「終活」とする依頼者も増えてきたという。

「その過程で家族での楽しい思い出や、感情の行き違いによるわだかまりも吐き出していただき、原山さんのように『すべては愛だった、愛しかなかった』と最後に気づいて、依頼者のご家族が看取りのすべてを肯定することが増えました。観念としての漢字の『命』ではなく、五感を使って体と心で受け止めるしかない、ひらがなの『いのち』だということを、むしろ以前よりもお伝えしやすくなったと思います」(柴田会長)

親の死に目にさえ会えれば、いい看取りができるわけではない。高齢者にとっての「終活」はかなり定着したようだが、残される家族がその死をどう受け入れられるのか、という意味での「終活」の大切さはあまり語られない。

だから看取り士という第三者が支える家族の最期を通して、私たちが与えられる気づきは決して小さくはない。

荒川 龍:ルポライター

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