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病院が「患者さま」と呼ぶのをやめ始めた深い事情 横行する「カスハラ」看護師の手を舐める患者も

東洋経済オンライン / 2024年8月4日 11時0分

カスハラと患者の権利をどう考えたらいいのでしょうか(写真:佐久総合病院提供)

医療機関で「患者」のことを「患者さま」と呼ぶ習わしを見直そうという動きがある。

【写真で見る】長野県佐久市の佐久総合病院に掲げられている「患者さんの権利と責任」

「患者さま」という呼称が一部の人の誤った権利意識を助長するほか、「病気を患った人」という意味の言葉に、「さま」という尊敬語を付けるのは適切ではないといった指摘を理由に、「患者さん」という呼び方に変える動きが一部の病院で出ている。

その背景にあるのが、医療現場での患者や家族などからの迷惑行為、いわゆる“カスハラ(カスタマーハラスメント)“の深刻化だ。

「患者さま」のきっかけは?

厚生労働省がまとめた「カスハラ対策企業マニュアル」では、カスハラを「顧客などからのクレームや言動のうち、手段・態様が社会通念上不相当な言動」と定義し、具体例として身体・精神的な攻撃(暴行・傷害)、威圧的な言動、土下座の強要、差別的・性的な言動などを挙げている。

病院では患者が顧客となるので、“ペイシェントハラスメント”と呼んだりもする。

医療現場では、患者やその家族の言動がカスハラかそうではないかの判断が難しいケースもある。認知症などの症状によるものかもしれないからだ。高齢化により、医療が在宅でも提供されるようになったため、カスハラが訪問看護などの密室で起きると、実態の把握はより難しい。

患者を「〇〇さま」と呼ぶようになったきっかけは、厚生労働省が2001年11月に通知した「国立病院・療養所における医療サービスの質の向上に関する指針」。ここで推奨され、全国的に広まったとの説がある。

指針では、患者に対するていねいな接遇を実践するために、「原則として、姓(名)にさまを付することとするが、診療や検査等、諸般の状況に応じ、適宜他の呼称方法(例:〇〇さん)を用いる」と記された。

この指針により、病院関係者が患者への接遇の仕方を模索するなかで、よりていねいな呼称にするのがいいだろうと、「〇〇さま」を使わなくてはならないというムードが醸成された。ある病院関係者に聞くと、その頃から公文書には「患者」ではなく、「患者さま」と書くようになったと、当時を振り返る。

カスハラの対象は看護師

医療現場のカスハラでは圧倒的に女性の被害が多い。看護師は女性が多いからという背景もあるだろう。

カスハラによる精神障害は2023年9月、国の労働災害の認定基準に追加された。2023年の最新データによると、精神障害による労災請求件数は全産業では3575件、業種別では「医療、福祉」が888件で、前年より4割増えている。次いで多いのは「製造業」で499件、「卸売業、小売業」で491件なので、「医療、福祉」が突出しているのがわかる。

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