「三公七民に地税なし」羨ましすぎる江戸の税事情 農民は「隠し田」による脱税も黙認されていた
東洋経済オンライン / 2024年8月6日 16時0分
農民たちがこのような豊かな生活を送れたのには、税がそれほど重くなかったことがあります。江戸時代の年貢は、通説では五公五民などと言われていますが、現実の収穫量などを検討すると三公七民くらいだったようです。
江戸時代の初期はインフラ整備の費用がかかったので、四公六民くらいでしたが、それが一通り終わると、三公七民くらいに落ち着いたようです。また、インフラ整備のときに多めに取られていた年貢も、その多くは人夫として雇われた農民などに支払われました。
年貢の決め方には、「検見(けみ)法」と「定免(じょうめん)法」がありました。
検見法というのは、その年ごとに収穫具合を見て年貢を決めるというものでした。この検見法では、その村落であまり収穫のよくない田んぼが基準とされました。なので、農民にとってはかなり有利となったのです。
また、検見に来る役人(武士)に対して、村は丁重にもてなし賄賂を贈るなどして、年貢を低く抑えてもらうこともありました。
定免法というのは、過去の収穫量をもとにして一定期間同じ量の年貢にするという方法でした。あまり手間がかからないし、賄賂などの不正も生じないことから、江戸時代の後半はこの方法が採られることが多くなっていました。
定免法では、領主の側は一定の年貢が毎年入って来るというメリットがあり、農民の側は一定の年貢さえ払えばそれ以上に収穫したものは自分たちの物になるので、生産意欲がわくというメリットがありました。
定免法には、自然災害や天候不順などで収穫量が落ちた場合、農民の負担が大きくなるというデメリットがありましたが、そういう場合は、その年だけ検見法に切り替えられたり、例年よりも年貢量を減らすなどの方法が採られました。
つまり、どっちに転んでも農民の負担が大きく増えないようにされていたのです。
「隠し田」による脱税が黙認されていた農民たち
しかも当時は、どこの農村にも「隠し田」と言われる、簿外の田がありました。この隠し田には、年貢はかかりませんでした。
役人たちも隠し田の存在は、ある程度知っていましたが、多くの場合、見て見ぬフリをしていたのです。二宮尊徳も、年貢の課せられていないあぜ道などに作物を植えて、稼ぎの足しにしていたそうです。
もちろん、領主は農民の隠し田を把握し、年貢を増やしたいと思っていました。そのため、検地と呼ばれる「土地調査」を行おうとします。しかし、土地調査というのは実はそう簡単なものではありません。全国の土地を測るという実務的な困難さもありますが、農民の反発という大きな障害があるのです。
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