村上頌樹が振り返る「669球を投げぬいた」甲子園 大阪桐蔭との一戦が「虎のエース」を変えた
東洋経済オンライン / 2024年8月8日 17時0分
── しかしあの当時、近畿大会での大阪桐蔭戦の投球を見て、センバツであれほどの投球をするとは想像もしませんでした。
自分でも出来すぎた感はありましたけど、負けたくない気持ちがいい方向に出たのだと思います。
── センバツは全5試合、47イニングをひとりで投げ抜き自責点はわずか2。振り返ると、まず福井工大福井戦の10安打完封からのスタートでした。
この試合はめちゃくちゃ印象に残っています。試合が終わって、校歌を歌う時に整列してスコアボードを見たら、「えっ、10安打も打たれてたん?」と。そんなに打たれていると思っていなかったんです。
── そこから鹿児島実を4対1、滋賀学園戦は2安打完封。その後、龍谷大平安、決勝の高松商はともに2対1のサヨナラ勝ち。本当に厳しいゲームが続いたなか、669球をひとりで投げきりました。ふつう、それだけの球数をひとりで投げると徐々にへばってくるのに、まったくその気配がなかった。いま振り返っても、すごいことだと思うのですが。
子どもの頃からずっと投げてきたので、そのおかげかなと。小学校の時もふつうに1日2試合投げていましたし。ほんとに投げるのが好きで、投げるほど球もよくなって、コントロールも段々よくなっていったんです。
センバツの時もそうでしたし、プロに入ってからもキャンプではみんなより球数を投げて調子を上げていきます。
ほかの投手が投げて負けるのは「絶対に嫌」
── あれだけひとりでへばらずに投げきれた理由を解明できたら、投手指導の大きなヒントになりそうです。
今は球数制限とかあるじゃないですか。大変だなって思いながら見ています。
僕の場合は、当時からずっと投げたいと思っていました。エースナンバーを持っている自分が投げて負けるならまだしも、ほかの投手が投げて負けるのは絶対に嫌でした。
だから、球数制限で投げられずに負けるなんて……自分のなかでは考えられないです。このあたり、自分は完全に”昭和チック”なんですけど(笑)。
── 甲子園優勝投手となり、何か変化はありましたか。
周りからの見られ方が変わりましたし、夏へ向かう間の練習試合がめちゃくちゃしんどかったことは覚えています。
招待試合を含め相手が強いところばかりで、センバツ優勝校ということで挑戦者みたいに向かってこられて……。それが続いたのはしんどかったですね。
── 春夏連覇に向けてのプレッシャーはありましたか?
自分たちに「絶対連覇や!」という気負いはなかったんですけど、周りがその気になって、圧みたいなものは感じていました。
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