日本の最高学府・東京大学はどう変貌するのか 東大総長・藤井輝夫氏が「変革ビジョン」を語る
東洋経済オンライン / 2024年8月8日 12時0分
堀内:「カレッジ・オブ・デザイン」に先行して始まったエグゼクティブ教育――「東大EMP(東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム)」がその代表だと思いますが――は着実に実績を挙げていると思いますが、社会人に対する教養教育と教養学部や「カレッジ・オブ・デザイン」構想は、どのようにリンクすることになるのでしょうか。
東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム
藤井:東大EMPは、ビジネススクール的な学科を導入して専門知識を学んでいただくというよりは、エグゼクティブとして知っておくべき広い領域の知識や考え方、あるいは考え方を導く方法知を習得するプログラムです。
私の考えとしては、教室の中で学ぶことができる知識の塊や、演習などで学んだ知識を活用して何かを得ることはもちろんできますが、その範囲を越えて、いわゆるオフキャンパスの、学外でのアクティビティ、経験を通して学んでいくという実践の部分こそが、教養の要素として重要だと考えています。
これは、私自身が工学系の出身だからかもしれませんが、教養、あるいは自分の持っている知というものが、どのように活用し得るかということについて、経験を通して学んできました。こうした経験から、教室の中と外とを行き来すること、学びを社会と結び直すという考え方が大事なのではないかと考えるようになりました。
学びの場から社会、またその逆、どちらか一方向ではなく、社会との行き来を通じて、大学が生み出す知をどのように活用できるのか、あるいは何が足りていないのかについて、実際の経験や実践を通して気づきを得る。これをまた次の学びに生かしていくというサイクルが重要だと考えます。
このような実践を考えたときに、現在、数多くの新しい技術やツールが出てきています。最近の生成AIもそうですし、その前には、機械学習やインターネットがあったわけです。今は何かを調べようと思うと、ネットを検索して調べる、あるいはデジタルの技術でさまざまなところへアクセスすることが可能です。
調査の仕方についても、データセットを集めてくることができるようになり、そのデータをもとに議論ができます。さまざまなツールが次々と現れる中で、それが学問や知的な作業、さらには仕事のあり方をも大きく変えていきつつある、といってよいでしょう。
それから、現在さまざまなディシプリン(学問分野)がありますが、そのディシプリンは大学では学部、学科という形で分かれています。しかし、現代の人類社会が直面している課題、あるいは自然科学が突きつめて掘り下げている科学の問いは、単独のディシプリンのみによる解決が難しくなってきています。
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