社会的共通資本としての大学はどうあるべきか 藤井輝夫・総長が描く「未来の東京大学」とは
東洋経済オンライン / 2024年8月9日 13時0分
堀内:そろそろ時間もなくなってきましたので、もう一度大きな話に戻って、先ほどから「知」という言葉がたくさん出てきたと思うのですが、知や知識と教養との違いですね。藤井総長がお考えの教養というのはそもそも何なのかというお話をうかがいたいと思います。
藤井:教養というと、いわゆる自由七科(リベラルアーツ)がありますが、そのような静的な固定化された知識を学ぶだけでは不十分で、しかも現代社会で必要な知識というのは動的に変わりますので、むしろ知識を学んでいくその学び方や、学んだ知識の活用の仕方といった、いわば方法知というものとの組み合わせがきわめて重要だと考えています。
知識が爆発的に増加している現代において、あるいは、新しい技術やツールが次々と出てくる現代において、方法知の部分がしっかりしていないと、「教養」としても不十分ではないかと思います。
社会的共通資本としての大学
堀内:前回の最後に少し話していただきましたが、今の資本主義社会の中における大学ということについて何かお考えになっていることや、議論をされていることはありますか。
藤井:資本主義社会の中にあっては、大学とはほとんど社会的共通資本だと考えます。ですからこれをどう支えるかということは、大学の中だけで議論してやっていくというよりは、資本主義の仕組みの中で大学をどうするかについて――もちろんこれは最終的には財政的にどう支えるかという話も含めて――考えていかなくてはなりません。
もちろん大学側もしっかりそれに応えられるように、自分たちの活動をしっかり学外の皆さんに説明できるようにコミュニケーションをとっていく必要があります。その部分についてはまだ足りていないのではないか、ということも常々申し上げています。大学自体の活動をよりわかりやすい形で世の中に知らせていくべきだと思っています。
加えて、大学自体もよりオープンに、多くの人がアクセスしやすいようにしていく必要があると考えています。そういう中で、皆さまから支持・支援いただき、そのご支援をもとに大学が新たな学知を生み出していく、あるいは大学の活動を通じて社会に還元することで、それがまた新たな支援を生んでいく、という循環を生み出す。こうした新しい大学モデルの構築を考えていかなくてはならないのではないか。このことは社会的共通資本としての大学をどのようにして社会全体で支えるか、ということにも通じていくのではないか。このような議論は常々行っています。
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