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社会的共通資本としての大学はどうあるべきか 藤井輝夫・総長が描く「未来の東京大学」とは

東洋経済オンライン / 2024年8月9日 13時0分

堀内:宇沢弘文先生が提唱された社会的共通資本の中で、一番難しいところは担い手の問題だと思っています。要は市場取引に委ねるでもなく、国に任せるのでもない第三のエリアということで、宇沢先生はその管理を専門家に任せるというようなことを言っていたと思いますが。

藤井:そうですね。

堀内:では専門家とはいったい誰なのかということなんですね。冷静に考えてみると、現実的にそれができるのはやはり大学なのではないのかという気はしています。そうすると大学の役割は、新しい資本主義的な、市場取引の外の公共的な空間のようなものをイメージしたときにとても大きいだろうと。しかし、先ほどの事務が大変だという研究所の話のように、現実には皆さんそれどころではないというような感じになっています。

藤井:そこは多分に仕組みの問題だと思います。国立大学としての仕組み、大学としてのモデルと言ったらいいのでしょうか。アメリカのモデルが決して良いとは言えませんが、ヨーロッパ、英国、いろいろモデルはありますが、そこの大学自体も社会的共通資本としてどう支えるかというモデルの議論があってもいいのではないかと思っています。私たち自身、新しい大学モデルをつくると標榜しています。

これはある部分は国からの付託を受けて、つまり運営費交付金で支えられる部分がありますが、機能拡張部分と言っているのは、その外側で自己資金を獲得して、そこで自立的に役割を展開していくということです。

いまの日本の大学は、そういったハイブリッドのシステムの中で、先生方が本来の教育研究の業務に時間が使えるような形をどのようにつくっていくか、また先ほど堀内さんがおっしゃった人事や総務、あるいは財務もそうですが、その基盤的な部分の組織能力をアップデートし、まさにどうやって資本主義の中できちんと動いていけるようにするのか。そこも大事なテーマだと思っています。

欧米のダイナミックな大学の人事に学ぶこと

堀内:それに関連して、お答えしにくいことだとは思いますが、これだけ大きな改革を行うのであれば、総長の任期が1期では足りないように思います。そこはどうお考えでしょうか。

藤井:東大の場合、総長の任期は6年で、引き続いて再任することができないことになっています。確かに欧米の諸大学を見ると、かなり長く学長をやっていらっしゃるケースがあることも事実です。

また、欧米、とくに英国とアメリカの間ではバイス・チャンセラー、プレジデント、プロボストのある種のマーケットがあって、そこでどんどん人材が動いていますが、日本でも本来はこのような動きが起こってもよいのでは、ということは感じますね。つまり、ずっとアカデミアで研究に取り組んできた先生が、学部長を経験し、その後に学長になって、それでキャリアを終えるモデルではなく、まずは小規模な大学の学長や学部長に就き、その後より大きな大学の学長を経験して、更に大きい大学に移っていくという人事、マネジメントのあり方があっていいように思います。

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