BPOの大義はあくまで言論・表現の自由を守ること 元BPO委員「コンプライアンスにもほどがある」
東洋経済オンライン / 2024年8月10日 20時0分
その際に最もガッカリする研修会は、役員が神妙な顔をして「意見書の提案を遵守します」と言ったきり、シーンとしてしまう研修会である。「BPO委員の前で余計なことを発言するな」と箝口令でも敷かれているのだろうか。
それとは逆に、放送局員が自由闊達に発言する研修会もある。「このような事案を起こしたことは、同じ放送人として恥ずかしい」と意見書以上に強い口調で身内を批判する人、かと思えば「意見書に書かれてある再発防止策では現場が回らない」と本音を言う制作者もいた。
このような応答こそが、ジャーナリストとしての矜持であり、放送人の気概ではないだろうか。意見書を起点としながら、まさしく自主自律で改善策を考えてほしいのである。
BPOのせいで番組がつまらなくなったのか
それでは、BPOの委員会が番組を審議するコンプライアンスの基準とは何だろうか。最も上位にある基準は、「言論・表現の自由」だということはすでに述べた。
次に来るのはNHKの「日本放送協会番組基準」や「日本民間放送連盟放送基準」をもとに各民放局が自律的に定めた「放送基準」である。筆者はその外側に、放送人の職業倫理があると考えている。そして、さらにその外側には社会の「常識(コモン・センス)」がある。
「BPOのせいで、最近番組がつまらなくなった」と批判されるのは、特に青少年に対する配慮と卑わいとみなされる表現であろう。
民放連放送基準「3章 児童および青少年への配慮」には、「(15) 児童および青少年の人格形成に貢献し、良い習慣、責任感、正しい勇気などの精神を尊重させるように配慮する」「(17) 児童向け番組で、暴力・残忍・陰惨などの場面を取り扱う時は、児童の気持ちを過度に刺激したり傷つけたりしないように配慮する」とある。また「8章 表現上の配慮」では、「(47) 不快な感じを与えるような下品、卑わいな表現は避ける」としている。
それではBPOは上記の点についてどのような意見を出しているだろうか。青少年への配慮を審議するBPO青少年委員会は、個別の番組を審議する場合は、放送局の制作担当者との意見交換や書面での質問をもとに問題点を議論し、「委員会の考え」をまとめる。委員の3分の2以上の賛成があれば委員会の「見解」とすることができる。
青少年委員会が放送局に向けて伝える「委員会の考え」は、放送事業者の自主的検討を促すことを目的とし公表するもので、基本的には具体的検討結果の報告を求めるものではない。「見解」は、放送事業者の自主的検討を要請するため公表するもので、その具体的検討結果についても放送局から報告を求める(青少年委員会「委員会活動と議論の流れ」より)。
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