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BPOの大義はあくまで言論・表現の自由を守ること 元BPO委員「コンプライアンスにもほどがある」

東洋経済オンライン / 2024年8月10日 20時0分

英米合作の「アウトランダー」(2014年からシリーズ継続)は、タイムスリップによるファンタジーでありながら、スコットランド独立をめぐる内戦、独立前のアメリカ大陸移住、ネイティブアメリカンの虐殺など、史実を織り交ぜながらドラマが展開していく。

「クイーンメーカー」の財閥や政党などの描写はドラマ的な誇張もあるかもしれないが、韓国社会の暗部を描くことに忖度はない。「アウトランダー」では、戦いは血で血を洗う肉弾戦だし、主人公カップルのセックスシーンもある。

何より二つのドラマとも、主人公たちが必ずしも品行方正とは限らない。「クイーンメーカー」であれば財閥を倒すために権謀術数を尽くすし、「アウトランダー」では生き残るために戦争以外の殺人も犯す。

はたしてこのような表現は、日本のドラマでは不可能なのだろうか。日本放送協会番組基準「第1章第9項風俗」であれば、「1 人命を軽視したり、自殺を賛美したりしない。2 性に関する問題は、まじめに、品位を失わないように取り扱う」としている。

「アウトランダー」の肉弾戦が18世紀イギリスの史実に基づいて描かれ、主人公たちのセックスシーンが双方の同意によるものだとすれば、この基準を逸脱していると言えるだろうか。

同じくNHKの放送基準「第1章第10項犯罪」では、「1 犯罪については、法律を尊重し、犯人を魅力的に表現したり、犯罪行為を是認するような取り扱いはしない」となっている。

「クイーンメーカー」で最終的に財閥の犯罪が糾弾されるとすれば、財閥出身候補が暗殺などで対立候補を陥れるシーンを描いてもいいのではないだろうか。

レイティングが放送の表現の自由を拡大する

比較すると日本のドラマは、どのようなジャンルであってもシュガーコートに包まれた「家庭向けの」ドラマに見えてしまう。スイッチをつければ誰にでも見られる可能性があるからと「青少年の健全な保護育成」を理由に、事なかれ主義で、現実に存在する差別、暴力やセックスを覆い隠してしまっていないだろうか。

筆者はかつて、「親と一緒の視聴を推奨」や「14歳未満の子どもには不適切」などと番組をレイティングするアメリカの地上波放送の方式には反対だった(「Vチップは『反教育的』だ!」、『GALAC』1998年6月号所収)。だが、今はむしろ、レイティングが放送の表現の自由を拡大する可能性があるのではないかと考えている。

NetflixなどのOTTでは、「16歳以上の視聴を推奨(16+)」や「暴力(シーンが含まれる)」などが表記されている。将来的にデジタル技術の進展で、地上波放送でもチャイルド・フィルターをかけることが可能になれば、同じように「大人向け」番組が多く制作されることを期待できるのではないだろうか。

藤田 真文:法政大学社会学部メディア社会学科教授

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