是枝監督「長編デビュー作」に残る"輪島の風景" 能登半島地震の復興を願い、リバイバル上映
東洋経済オンライン / 2024年8月10日 11時0分
『幻の光』では、能登・輪島市民の台所として親しまれた「輪島朝市」の様子が映し出されている。道の両側に並ぶ店で活きのいい魚、貝、海藻や季節の野菜などが販売されている。© 1995 TV MAN UNION
芥川賞作家・宮本輝の同名小説が原作、『万引き家族』の是枝裕和監督の長編映画デビュー作となった1995年の映画『幻の光』が「能登半島地震 輪島支援 特別上映」と題してBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下にてリバイバル上映中。8月2日より公開され、動員も好調とのことで、今後も全国で順次公開が予定されている。
【写真】本作の公開から29年後に能登半島地震が発生。写真は大きな被害があった輪島朝市の現在の光景。
石川県輪島市を舞台に「生と死」「喪失と再生」というテーマを、陰影深い映像に昇華させ、ベネチア国際映画祭で金のオゼッラ賞(撮影に対して)を受賞した同作。
かつて渋谷で営業していたミニシアター「シネ・アミューズ」のこけら落とし作品として上映され、連日満席を記録する話題作となった。同作の合津直枝プロデューサーは「輪島市の協力がなければ、映画は完成していなかった」と語っている。
公開から29年後に能登半島地震が起きる
それから29年後の2024年元日。能登半島地震で輪島市は甚大な被害を受ける。そこで合津プロデューサーは「今こそ映画を通して輪島市に恩返しを」という思いから、デジタルリマスター版で新たに再生した同作のリバイバル上映を企画。収益から諸経費を除いた全額をロケ地となった輪島市に寄付し、1日も早い復旧復興を祈念することを目的としている。
そこで今回は、本作の企画を担当したプロデューサーの合津直枝氏と、本作の撮影を担当した中堀正夫氏に当時の撮影の話、輪島への思いを聞いた。
――合津さんは「輪島がなければ『幻の光』は生まれなかった」と言っていますが。
合津:ちょうどテレビに限界を感じることがあり、テレビではできないものをつくりたいと思うようになった時に宮本輝さんの短編小説『幻の光』の映画化を企画しました。
宮本さんからは1000円という破格の値段で映画化権をいただくことができました。テレビドラマでは通らないような企画を映画でやってみようという考えだったのですが、始めてみるとそんな簡単じゃなかった(笑)。
――企画を成立させるまでに3年以上の月日が経ったそうですが。
合津:やはり地味な話でしたから。お金も集まらない、配給のメドもたたないまま、3年という月日が経ってしまいました。
ある会社の方からは「こんな暗い映画を誰が観るんだ」と台本を投げ返されたこともありました。そんなこともあり、わたしはもう映画づくりを諦めるつもりで、(あらためて主人公の足跡をたどるべく)輪島に旅をしたんです。
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