1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

是枝監督「長編デビュー作」に残る"輪島の風景" 能登半島地震の復興を願い、リバイバル上映

東洋経済オンライン / 2024年8月10日 11時0分

――前半はどちらで撮影したんですか?

合津:いちおう(原作の舞台である)尼崎にロケハンに行ったんですけど、その時は高速ができていて。宮本輝さんが描いた情景とまったく違っていたんで、中堀さんのアドバイスもあって(東京の)三河島で撮影しようということに。

中堀:自分は日暮里で生まれたんですが、三河島とかには、尼崎と同じような感じに見える場所があるんですよ。撮影はちょうど(1995年の)阪神・淡路大震災のころでしたね。

合津:クランクインが1月末予定で、1月17日が阪神・淡路大震災ですから。もしロケ地を尼崎にしていたら、映画は完成していなかったかもしれません。

――1995年の阪神・淡路大震災の年に撮影された映画が、能登支援のためにおよそ30年ぶりに上映されるというのも不思議なめぐり合わせですね。

合津:宮本さんの伊丹のおうちも阪神・淡路大震災で半壊していますから。

中堀:宮本さんはエキストラ出演もされています。その時に「なんかいい映画になるんじゃないか、という漠然とした予感がありました」とおっしゃってくださっていましたね。

――なんといっても主人公が嫁いだ先の漁港、鵜入の景色もすばらしいなと思いますが。

合津:珠洲のほうからずっと南下して探してまわったんです。でも鵜入がちょうど撮影にも手頃ないい形で。見つけた時は、わたしたちを待っててくれたのねと思いました。本当にきれいな場所だなと思いました。

中堀:やはり能登のああいう景色は広い画面が効いてくるから。鵜入の家は、大工さんが裏の板を全部剥がして新しいのを張って。それを美術スタッフが(経年劣化を見せるために)焼いて、またそれをブラシで擦ってと。

合津:年末返上でやってくれました。

中堀:最初(準備段階)は監督も来ないはずだったんですけど、そこまでやってもらったんだから。監督も、(主演の)江角さんも来て。自分たちがどういうところでやるのか、見たほうがいいよということで。来てもらいましたね。

まるで仕込んだかのように降った雪

――能登の景色が非常にすばらしかったのですが。

中堀:最後の雪のシーンなんかも、突然降ってきたものなんですよ。黒澤(明)組だったら大扇風機を8台ぐらい持って雪を降らせるところでしょうが、われわれにそれはできない。だからあそこは偶然なんです。

合津:私たちも現場で息をのみました。誰が仕込んだの? 違うよねって。

中堀:こんなもの仕込めるわけない(笑)。その前には、江角さんがバス停でひとりで待ってるシーンを撮っていたんです、どピーカン(晴天)で。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください