「5割できればOK」92歳シスターの"納得の境地" 「あきらめる」ことで人生が好転することもある
東洋経済オンライン / 2024年8月14日 15時0分
とかく「自己責任」を問われがちな現代社会において、「自分自身を責めたり、現状に満足できない人がなんと多いことでしょうか」と嘆くシスターの鈴木秀子さん。そんな鈴木さんは、世界が多様で豊かになるためには、自分が自分のままでいることが大切だといいます。
92歳になる鈴木さんがたどり着いた、自分のままでいるための「正しいあきらめ方」を紹介します。
※本稿は、鈴木さんの著書『ゆっくり変わる』から、一部を抜粋・編集してお届けします。
「50%の力を出し切ることができて、ありがたい」
思うような結果が出せそうにないとき。あなたは「悔しい」と思うほうですか。「仕方がない」とあきらめるほうですか。
私は自分の目標が半分達成できていれば、それで十分と思うようにしています。むしろ「50%の力を出し切ることができて、ありがたい」と感謝をします。
これは私が年齢的に「無理がきかない」という理由も大きいかもしれません。ですが、長年生きてきて得た知恵でもあります。
できた部分については喜び、できなかったことについては謙虚に受け止め、能力を冷静に把握すること。私はこの態度を「聖なるあきらめ」と名づけています。
「聖なるあきらめ」で大切なのは、ただ「あきらめる」のでなく、「自分の身の丈を知る」ということです。人は、完璧に何でもこなそうとしたり、能力以上のことに挑むとき、苦しくなったり無理が生じるものです。
私のモットー「5割できればいい」という考えに対して、「目標設定が低すぎる」「向上心がない」と批判的な見方もできるでしょう。ですが「人間は完璧ではない」「自分の能力はそうそう高くはない」と、冷静に自分の力をつかんでおくことも、大事なことです。
もちろん、最初から目標を少し高めに設定して頑張ることにより、能力がアップしたり、技術が身についたりというケースもあるかもしれません。ですが、ずっと続けていると、いつか必ず疲れてしまいます。
登校拒否児童の変化を生んだ「聖なるあきらめ」
「聖なるあきらめ」といえば、必ず思い出す話があります。
私が主宰するセミナーの参加者に、引きこもりの息子を持つ1人の母親がいました。息子は、小学校から登校拒否となり、家にこもってはゲームに熱中し、家族への暴力を始めたそうです。
母親は、息子の問題を解決しようと、占い師やカウンセラーなどさまざまなところに助けを求めて訪ね歩きつつ、10年間も過ごしてきました。
このセミナーでは、参加者同士で話を重ね、苦しみや体験を共有しています。母親はその過程で、あるとき「もうあの子を立ち直らせようとは思うまい」と感じたといいます。これこそ「聖なるあきらめ」というものです。
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