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「クサウマい」博多ラーメンが東京で増えない理由 豚骨臭、安価なイメージゆえの薄利…だけではない

東洋経済オンライン / 2024年8月18日 14時0分

(3)技術の習得が難しい

熟成臭のあるクサウマの豚骨ラーメンは「呼び戻し」の製法が一般的だ。寸胴鍋を決して空にせず、古いスープに新しいスープを継ぎ足しながら作る製法である。その技術を会得するのは本当に難しいのである。

東京・赤坂にある「博多ラーメン 和」の店主・馬場圭佑さんは修行をせずに独学で博多豚骨ラーメンの作り方を編み出した。YouTubeの動画をくまなく見て研究し、創業から10年になる今年、ようやく満足のいく一杯にたどり着いた。

「豚骨オンリーでスープを仕上げるには技術が必要で、毎日のブレも大きいため、作り方の継承が大変難しいです。基本的には見て学び、感覚を研ぎ澄ますしかなく、簡単にできるものではありません。よく豚骨ラーメンの職人のことを“感覚派”という人がいますが、そもそも数値化できるものではないので感覚を育てるしかないのです」(「和」馬場さん)

そもそもクサウマ系のお店が少ない中で、独立希望者が修行できる店自体が少ないため、職人が育たないという現状もある。実際修行できたとしても、その技術は限りなく属人的なので、弟子が育つとも限らない。

アルバイトを雇って安定してお店を回していくには、寸胴鍋に決まった量の豚骨などの素材と水を入れ、毎日その都度煮込んで作る「取りきり」の技法でスープを作っていくしかない。豚骨ラーメンのチェーン店の多くは取りきりでスープを仕上げている。

「和」の馬場店主は、本場っぽい豚骨ラーメンを目指しながらも、取りきりと呼び戻しの良い部分を融合し、独自のハイブリッドな豚骨スープを仕上げているが、それでもその作り方が属人的であることには変わりはない。

豚骨ラーメンには厳しい時代背景

(4)「博多豚骨ラーメンは安い」というイメージ

さらにクサウマ系が広がらない大きな理由は、「現地の博多豚骨ラーメンは安い」というイメージだ。現地・博多ではラーメンがとにかく安く、500~600円で食べられることは当たり前で、安いところだと200~300円台というところもある。「1000円の壁」と戦っている都内のラーメン店において、この常識は大変厳しい。

「安価なイメージがあるため、利益を出しにくいとハナから敬遠されている可能性も高いと感じます。昔よりガス代やゴミ処理代が高騰しているので、その意味でも豚骨ラーメンには厳しい時代です」(元「きら星」星野さん)

「骨もたくさん使いますし、炊き続けるためガス代もかなりかかります。さらには卓上に紅ショウガや辛子高菜、ニンニクなど無料トッピングをたくさん用意しなくてはならず、このコストも考えると安く提供することは難しいです。はっきり言って店主が好きじゃないとできないですね」(「和」馬場さん)

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