トランプ・バンス体制を作った「極右思想」IT富豪 「トランプ後継」バンス副大統領候補の素顔(下)
東洋経済オンライン / 2024年8月20日 8時0分
貧困白人労働者の生活を描き、ベストセラーとなった少年時代の回顧録『ヒルビリー・エレジー』。あれから8年。作者のJ.D.バンスは共和党の副大統領候補としていまやトランプ運動を引き継ぐ最右翼に躍り出た。彼の正体を上編、下編に分けて読み解いていく。
前編「トランプ陣営の攻撃犬になったベストセラー作家」
バンスを変えたIT富豪ピーター・ティールとの出会い
バンスの政界進出に際してパトロンになったのは右翼で80億ドル(約1.2兆円)の資産を持つハイテク大富豪ピーター・ティールである。彼はバンスのビジネスと思想の両方のメンターでもある。バンスが上院議員選挙に出馬するとき、1500万ドルの資金を寄付している。
トランプとバンスの橋渡しをしたのも、ティールである。ティールはトランプを説得し、トランプも最終的に共和党予備選挙でバンス支持を表明した。当時、メディアは、バンスを2020年の選挙結果を否定するトランプ派の候補者として紹介している。
バンスの“変節”の背後にティールの存在がある。2011年、イェール大の法科大学院の学生だったバンスは「大学で時間を無駄にすべきでなく、IT業界で働くべきだ」というティールのスピーチを聞き、大学生活に不満を抱いていたバンスは感動し、彼にメールを送った。ティールはバンスをカリフォルニアに招待した。ティールとバンスの出会いである。
バンスは大学院を卒業した後、短期間、連邦判事の事務官として働いたが、サンフランシスコに移り、ティールの持ち株会社ミスリル・キャピタルに就職した。そこでバンスはティールの思想の影響を受け、保守思想を受け入れるようになる。アメリカのメディアは「バンスはティールが作り出した(Vance is a Thiel’s creation)」と書いている。その後、バンスは故郷オハイオ州に戻り、自分のファンド会社ナルヤ・キャピタルを設立する。ティールは、そのファンドに出資している。
ティールは自らの思想を「国家保守主義(national conservatism)」と呼び、「自由と民主主義は両立しない」として、「権威国家」を樹立する必要性を説いている。「権威国家」は「民主主義」より優れていると考えている。そして中央集権的な政府を分割し、テクノロジー企業がIT技術を使って管理する分散型の体制に変えるべきだと主張している。
ティールとバンスは「極右の思想」で一致
こうした理論は、中央集権的な連邦政府の解体を主張する「極右の思想」と一致する。ティールを通して、バンスは、こうした思想を共有し始める。
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