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「2ナノ半導体」量産挑むラピダスの地政学的優位 日の丸半導体、「いまさら無理」でもない理由

東洋経済オンライン / 2024年8月22日 14時0分

ところが、両国とも地政学的に見て万が一のリスクを否定できない。台湾は中国による台湾有事のリスクがある。韓国も、地政学者の解釈によれば、中国や北朝鮮と地続きである点が懸念されるといわれる。

その点、日本は中国や北朝鮮と、日本海や東シナ海を隔てた位置にあり、台湾や韓国と比べて地政学的なリスクは比較的少ない。半導体装置や材料の分野でも、世界的なサプライヤーがいる。さらに日本のものづくりの力、量産技術は世界でも一定の評価がある。こうした点を検討した結果、IBMは日本に白羽の矢を立てたと考えられる。

その背景には、中国共産党に対する態度を硬化させる米国政府の思惑もあったかもしれない。

ケリー氏からの依頼を受けた東氏は、かつて日本初のファウンドリーをめざしたトレセンティテクノロジーズを立ち上げた小池淳義氏に相談した。IBMの2ナノのチップ開発技術という「教科書」はある。そのうえで2ナノ半導体の製造が本当に日本で可能なのかどうか、徹底的に検証した。

「できる」

そう結論づけた2人は、ラピダスの設立を決意した。

2ナノメートルの世界

IBMによると、2ナノは7ナノに比べてパフォーマンスが45%アップし、消費電力は75%減少するという。これは、携帯電話のバッテリー寿命が4倍に延びるほどのインパクトだ。

「2ナノの世界」ではどんな景色が見えているのだろうか。

まずは、自動運転の例でお話ししよう。

自動運転技術にはいくつかの方法がある。1つはLiDAR(Light Detection and Ranging)といわれるセンサーによる自動運転だ。車両の上部などに取りつけられ、光を使用したリモートセンシング技術によって、物体検知や物体までの距離を計測する。

LiDARはすでに自動車各社で実用化されておりご存じの方も多いだろう。ただ、センサー式は、整備された都市部の道路や高速道路であればいいが、たとえばインドやアフリカの地方部といった未整備の場所には向いていない。

やや余談になるが、最も難易度が高い自動運転は、戦車だといわれている。道なき道を進み、何が飛び出してくるか予測ができない中で、向かってくるものを瞬時に認識し、場合によっては攻撃しなければならないからだ。

インドやアフリカを走る自動運転車が戦車並みの水準を備えなければならないわけではないが、少なくともセンサー式では頼りない。

さて、もう1つは画像認識による自動運転で、これはコンピュータが人間と同じように〝目〞で見て自己判断するイメージである。ただ、その裏で、すさまじい量の演算が必要になる。

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