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「2ナノ半導体」量産挑むラピダスの地政学的優位 日の丸半導体、「いまさら無理」でもない理由

東洋経済オンライン / 2024年8月22日 14時0分

自動運転が現在のレベル4(限定地域内の自動運転や高速道路での完全自動運転など、特定条件下における完全自動運転)であれば、センサー式自動運転でも問題ない。その場合、5ナノや3ナノの半導体で対応できる。

しかし今後、レベル5(つねにシステムがすべての運転タスクを実施する完全自動運転)に移行すると、センサー式から画像式に移行すると考えられる。半導体も確実に2ナノ以降が必要になる。

ラピダスが公言している2ナノの量産開始時期は、2027年である。その2027年には、自動運転の実用化が現実になるとされている。

さらにこのころになると、EVの電池の半分以上は、電気系統や自動運転機能が食ってしまい、モーターの駆動に回す余力がなくなってしまうのではないかと懸念されている。消費電力を削減する意味でも、2ナノ以降の半導体搭載は必須条件になってくる。

台風の目にくさびを打ち込める?

「2ナノの世界」では、量子コンピュータが稼働を始める。量子コンピュータは、古典コンピュータと呼ばれる従来型コンピュータに比べて「1億倍速い」ともいわれる。これほどの超高速計算を実現するには、最低でも2ナノの半導体が欠かせない。

たとえば近年、大型の台風やハリケーンによる被害が世界各地で起きている。研究者の間では、台風が膨張していくどこかのタイミングで、台風の目に何かを「打ち込む」ことで、大型化を食い止められるのではないかと考えられている。架空の台風をリアルタイムにシミュレーションするためには、古典コンピュータの演算ではとても間に合わない。

また、慶応義塾大学では、腸内環境を量子コンピューティングによって解明しようとする研究が始まっている。人間の免疫は7〜8割が腸で決まるといわれており、潰瘍性大腸炎やクローン病などは、腸内細菌(腸内フローラ)のバランスが大きく影響することがわかっている。そこで、健康な人の便から抽出した腸内細菌を移植することで、患者の腸内環境を改善しようという試みが実用化している。

ただ、100兆個ともいわれる腸内細菌のうち、どれがどのように効いているのか、あまりにも複雑すぎてまだ解析しきれていない。現在は「これかもしれない」と思われる7〜10種類の腸内細菌を集め、カクテルにして摂取する試みが臨床試験段階にある。量子コンピュータで超高速計算すれば、その人それぞれに合った腸内細菌の種類がきわめて正確に特定できるかもしれない。

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