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「脱炭素を通じて社会変革」。先進企業に学ぶ戦略 迫り来る「5つの変化」を、ビジネスの好機に

東洋経済オンライン / 2024年8月23日 9時0分

東京製鉄・田原工場の世界最大級の420トン電気炉(電炉)。CO2排出の少ない製鉄方法として価値が高まっている(提供:東京製鉄)

前編の記事では、気候変動という地球規模の喫緊の課題と、第4次産業革命とも呼ばれる社会経済構造の大きな変革の潮流を踏まえ、1.5度目標実現に向けたロードマップを考えることがなぜ重要かを解説した。

【図で見る】「5つの変化」「20の好機」とは?

変革に向かう潮流の中で、二酸化炭素(CO2)排出量削減に資する取り組みと、社会課題を解決しつつ、人々の暮らしを豊かにする取り組みがうまく調和すれば、新たな事業機会へとつながっていく。

後編の今回は、これらの変革をどのように促していくかという視点から、先進企業の取り組み事例を紹介する。

1.5度目標達成のカギとなる社会の変革

はじめに、変革を促す理論的枠組みとして、2000年代にイギリスの社会学者Frank Geels氏などが発展させてきた研究的概念の一部を紹介する。

同氏によれば、 変革とは、個人や個別企業レベルでの変化の集合体であり、新しい取り組みの成功体験が積み重なりながら拡大し、社会全体に広がった結果だとも言える。しかし、現在の社会経済システムは、これまでの取り組みを効率的かつ円滑に実行できるような制度や人々の意識や慣習によって成り立っていることから、変革は簡単に進むものではない。

たとえば、新たな取り組みを始めようとすると、現在の社会経済システムの中にあるさまざまな構成要素と相容れない状況が発生し、単なる試行的な取り組みに終始してしまうケースがほとんどである。

そのため、新しい取り組みを拡大していくためには、単に個別事例を磨き上げていくだけではなく、現在の社会にあるさまざまな制度や慣習のアップデート(更新) を同時並行で継続的に行っていくという視点が重要であるとGeels氏は指摘している。

これらの理論的枠組みは、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第6次評価報告書でも取り上げられ、近年ますます注目度が高まっている。

筆者が所属する「公益財団法人 地球環境戦略研究機関」(IGES)では、前編で紹介した「IGES 1.5℃ロードマップ」を基に、1.5度の世界に向かう中で生まれるであろう社会経済の変化と、それに伴う事業機会を「5つの変化」「20の好機」としてまとめた。

「5つの変化」とは、「生産性が変わる」「エネルギーの作り方が変わる」「素材利用が変わる」「ルール・インフラが変わる」「マーケット・マインドが変わる」の5つであり、各変化に対してそれぞれ4つの好機を示している。

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