ドル円レートの「正しい理論値」など存在しない だからこそ意図的に歪みを加えてはいけない
東洋経済オンライン / 2024年8月24日 21時30分
なぜそう言えるのか。説明しよう。
その前に、まず、経済学における為替の理論をおおざっぱに概観しておこう。まずは古典的な、購買力平価である。
これは「世界中で一物一価が成り立つような水準に為替レートが決まる」という考え方で、要はビックマックレートとかスターバックスラテレートなどと同じ考え方である。
日本でだけあるブランドもののバックが安いと、世界中から日本にそれを買いに来る観光客が溢れたり、バイヤーが転売したりするので、そのモノの価格が世界中で一物一価に収斂していくが、それをマクロ経済全体で行うのは、為替レートが動くほうが早いので、為替が調整される、という考え方である。
逆に言えば、世界中で一物一価が成り立っているときに、為替がずれてしまうと、大混乱が生じるから、為替がぶれたときに、瞬時にもとに戻るほうが早いから、為替レートが調整するということである。
実体経済における貿易収支を通じた調整も働く。為替レート(例えば円)が安くなって、国内物価が安くなった国からは、その安くなった製品が輸出され、外貨(例えばドル)を稼ぐ。その稼いだ外貨を自国通貨(例えば円)に戻すから、ドル売り円買いが起きて、ドル安円高になる。マクロ経済均衡に戻る、つまり、為替レートのずれが基に戻るようになる。
この購買力平価理論は物価の絶対水準の話なので、絶対的購買力平価理論であり、相対的購買力平価理論もある。それは、物価の変化率、つまりインフレ率の各国間の変動の違いを為替レートが調整する、という理論で、つまり、インフレ率が高くなった国の通貨の為替レートは安くなって、国際的な物価水準の変動が調整される、ということになる。
もう1つの理論である「金利平価理論」とは?
もう1つの為替均衡理論は、金利平価理論で、資本市場において、裁定取引が働いて、為替レートが均衡するという理論である。つまり、外国(米国)の金利が高く、自国(日本)の金利が低い場合、アメリカのドルで運用したほうが得になってしまうから、均衡では、ドルが今後安くなることが予想されていることになる。
つまり、金利差が年率5%あれば、1年後のドルは今より5%安くなるはずだ、と投資家たちは思っているということだ。それなら、ドルで運用して円で運用するよりも5%ドルの名目値が増えても、ドルが円に比べて5%安くなるから、ドルでも円でもどちらで運用しても同じリターンが得られる、ということだ。そう期待されているから、実際にも、ドルは1年後には5%安くなっている、ということになる。
この記事に関連するニュース
-
日経平均株価「史上最大の暴落」は「秋からはじまる株価上昇」の予兆!?…今後の日本株式に期待できるこれだけの根拠【経済の専門家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月24日 9時15分
-
日本銀行の独立性を殺したのはいったい誰なのか 歴史に禍根を残すことになった「8.7内田会見」
東洋経済オンライン / 2024年8月18日 9時30分
-
浜田宏一「インフレを退治し、ドル円の為替レートを安定化するには長期・短期の利上げが避けられない」
プレジデントオンライン / 2024年8月17日 9時15分
-
ドル/円急上昇、149円台へ。来週前半の円安のメドは?
トウシル / 2024年8月16日 10時12分
-
“史上2番目”2200円超暴落の日経平均「下落はまだまだ終わらない」市場を覆う“恐怖の元凶”とは
日刊SPA! / 2024年8月4日 11時30分
ランキング
-
1焼き肉店に逆風…コロナ禍の出店増から一転、輸入牛肉の価格高騰で倒産が過去最多ペース
読売新聞 / 2024年8月24日 14時13分
-
2お金は知っている 生産バブル崩壊、中国から日本企業はどう撤退するか 習主席号令、延々と続く過剰生産と過当競争「言うは易し、実行し難し」の実情
zakzak by夕刊フジ / 2024年8月23日 6時30分
-
3U-NEXT「サッカープレミアリーグ独占配信」の成算 競争激化のスポーツ領域で勝負、放映権料も高騰
東洋経済オンライン / 2024年8月24日 8時0分
-
4処理水放出、埋まらぬ溝=対中国、WTOに活路―政府
時事通信 / 2024年8月24日 15時53分
-
5どうして?「赤字なのに操業を継続する」企業が多いワケ【経済評論家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月24日 9時15分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください