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ドル円レートの「正しい理論値」など存在しない だからこそ意図的に歪みを加えてはいけない

東洋経済オンライン / 2024年8月24日 21時30分

これはドル円の金利差が円安をもたらしている、ということと逆になっているように見えるが、必ずしもそうではない。予想外にアメリカの金利が上がったとしよう。予想外に金利差が広がったということであるが、この場合は、サプライズに対して瞬間的に急激に円安が進み、その後、金利差を埋め合わせるように、円高が進むことになる。

そうでないと、永遠にドル買いが進んでしまい、誰も円を持たなくなってしまう。だから、均衡に向かうとすると、いったん円安に急激にオーバーシュートして、そこから円高が進むことになる(ただし、実際には投機家たちが合理的に期待(将来への予想)をするかどうかなどにかかっているので、理論的にもさまざまなケース、シナリオが考えられる)。

ここでは為替理論を幅広く網羅することが目的ではないので、基本的なポイントを整理しよう。

為替の基本的な「3つのポイント」とは何か

第1に、理論は均衡理論であり、為替市場は常に均衡へ向かうことが仮定され、その均衡へ向かうメカニズムも機能することが前提となっている。しかし、現実の世界では、均衡はまったく成り立っていないし、かつ均衡へ向かうメカニズムも機能していない。したがって、現実の為替市場は理論と大きく異なる。

第2に、実体経済と金融資本市場とが分離している。実体経済における購買力平価と金融資本市場の金利平価の理論値が異なった場合、どうなるのか? 一般には短期的には金融市場、長期的には実体経済ということだが、絶対的購買力平価が長期的にも成り立ったことは過去にもほとんどない。実体経済と金融市場の分裂が、ここでも生じるのである。

第3に、均衡へ向かうメカニズムが、投機家や経済主体の期待に基づくものと為替への需要と供給によるものと2つ存在することが示唆されている。

前出の説明では、暗に合理的期待形成がなされる前提に実はなっているのだが、実際には、それは成り立たないことははっきりしている。また、為替は結局需給で決まるというのは、唐鎌理論もそうなのであるが、実は、金融市場では本来理論的には成り立たないはずの議論なのである。

なぜなら、需給で為替レートが本来の水準からのズレが生じれば、そのズレを利用して儲けようとする裁定取引が投機家によって行われ、すぐに為替は元の水準に戻ることになる。

となると、結局、実際、為替はどのように決まっているのか?

前出の議論を踏まえると、理論的には論理的とは言えないが、結局現実には需給で決まっている、という説だけが生き残りそうである。そうだとすると、なぜ、論理的には生じるはずの裁定取引が行われないのか?

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