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なぜ若者はキャリアに不安を持っているのか 「成果主義」ではなく「貢献主義」で捉え直す社会

東洋経済オンライン / 2024年8月29日 9時0分

勅使川原:たしかに、包容力と真逆ですもんね。そうした中で、社員に対してリスキリングを求めたり、自律的なキャリア形成を強調しているとしたら、「あなたをずっと見るつもりはないよ」というメッセージと捉えられても仕方ない。

舟津:まさに。これは日系企業ではなく、外資系企業の方のお話ですが、最近は新入社員研修でさっそくキャリア研修があるそうです。入社時点から他のところへ行くのもあなたのキャリアだと言われたら、「この会社にいちゃいけないの?」と疑問を持ってしまいますし、若手社員にとって余裕のなさにつながってしまいます。でもこれって、企業の余裕のなさの表れでもあるんですよね。

勅使川原:それはその通りだと思います。

利益を人に還元しない日本企業

舟津:財務的に見ると、日本企業の現金預金、利益剰余金、経常利益率の3つ全部、15年ぐらい右肩上がりなんですよ。儲かっているにもかかわらず、企業がリスクを取ることを恐れ、積極的な投資や社員への還元を行わない。企業が余裕を失い、ますます内向きになっている証拠だと思います。

バブル崩壊のトラウマが影響しているのかもしれませんが、今の日本の企業は財務的に余裕があるはずなのに、その力を発揮できていない。財務はよくなっても、経営がよくなったわけではない、という話になってしまいますよね。

勅使川原:大企業が内部留保を貯め込んで、それを積極的に活用していないとすれば、どこかでしわ寄せが出そうにも思いますが。

舟津:最近のニュースの一端から読み解くと、大企業が取引先や従業員に負荷をかけることで成り立っている利益構造という側面はあるかと思います。

勅使川原:権力勾配ありきなんですね。その力関係が前提にあるとしたら、利益をもたらす限りは面倒を見るという条件付きの承認にすぎないと。それは、余裕のない社会という話ともつながるような気がします。そうか、あくまで条件付きの愛なんですね。

舟津:そうですね。無償の愛はほとんど存在せず、つねに条件付きの関係が基本になっています。ただ、深刻なのは、それがビジネスだけにとどまらず、個人の関係にも広がっているところです。学生でたとえたら「自分のことを怒らないなら慕ってあげる」みたいな。そんな愛なんかいらんわと思うんですけど。

勅使川原:なるほどな。単純に博愛が疲れるという話でもなさそうですね。どうして他人を受け入れることが、コスト高に感じてしまう風潮が広がっているんだろうか。

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