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なぜ若者はキャリアに不安を持っているのか 「成果主義」ではなく「貢献主義」で捉え直す社会

東洋経済オンライン / 2024年8月29日 9時0分

舟津:いまパッと思ったのは、「そういう損なことをするやつはアホだ」みたいな言説が強まってきているのが影響しているのかなと。

勅使川原:損得を計算できないやつみたいな。

舟津:そうです、まさに。博愛は愚かだと。見返りのない愛を与えるなんて、リターンがない、無駄じゃないかということなんですよね。でも、博愛って基本的には理念であり価値観じゃないですか。そうしたいと思うからそうしている。

勅使川原:博愛自体に目的はないから、無駄だと考えるのは結果しか見えていないということ。

舟津:でも、そうした損得勘定に若者や学生は敏感になってきているとは思いますね。自分が損するのは嫌だから、もっと損得に気をつけないといけないみたいな。で、拙著でも述べたように、若者がそうなら、老若男女みんなそうなんです。

勅使川原:ふーん。それだと、すごい近視眼ですけどね。

舟津:間違いないですね。ものすごい近視眼。

勅使川原:でもこれって、経営学の枠組みというか、ゲーム理論的に説明できそうな気もします。

ギブしない人には、誰もギブしようとしない

舟津:ある程度は説明できると思います。ゲーム理論的な説明をするならば、そうした損得だけを考える生き方が非合理だと言える理由もあるはずです。そもそも、そういうゲームのルールで動いている人に、誰も愛を与えませんよね。

勅使川原:あっ、ほんとそうだ。

舟津:そうなんですよ。みんなが「何かを与えてくれないならやらない」と思っていたら、誰も動かない。最初に誰かがギブしないと始まらない。このことに、もっと気づくべきなんです。

勅使川原:ウーン!

舟津:とある先生は、学会のシンポジウムで共同研究について「うまく進めるコツのひとつは、まずは"Give, Give, Give"です」とおっしゃっていました。自分ができるものを全部与えないと共同研究なんか成立しないよ、というメッセージだと理解しています。そういうことを、義理堅いと言うのかなと。

勅使川原:なるほど、義理ってそういうことなんですね。筋をとおすというか。

舟津:そうなんです。退職されたある京大の先生は「花街」の研究をしていて、よく「芸者は呼ばれればどこでも行くんだ」とおっしゃっていたそうです。頼まれたら断らない。声がかかったら絶対に行く。助けを求められたらギブする。つまり京都の人たちは、損得勘定をしてからじゃないと受けないとしたら、みんなが膠着してしまうと直感的に理解しているんだと思います。だから、頼まれたらやっておけって。そのほうが長期的に見れば、物事がうまく回るという考えなんですね。

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