スペインで人気ラーメン屋経営する日本人の素顔 「金もコネもない」30代男性なぜ成功できた?
東洋経済オンライン / 2024年8月29日 10時30分
下地さんは新店舗の手伝いをする以外、お店にはめったに出てこないという。取材の日は、自身が経営するラーメン店のカウンターで営業時間中に瓶ビールを煽りながら、「できるだけ働きたくないんですよ」とさわやかに笑っていた。「普段は何をしていることが多いですか?」と聞いてみた。すると、こんな言葉が返ってきた。
「家でNetflixを見てます」
1987年3月、沖縄・宮古島出身の両親のもとに東京の府中で生まれた下地さんは、兄と妹に挟まれ、自由気ままに育った。
これといった夢はなかったが、漠然と将来は海外に住みたい、と思っていた。高校を卒業し、父の建設会社で働いた。バックパッカーをしていたら海外に住めるかもしれないと思い、お金を貯めては1カ月から3カ月休みをとり、ヨーロッパを中心に放浪した。
ひとり旅を続け、人との繋がりが雪だるま式に増えてくると、「これ、いけるな(海外に住めるな)」と、根拠のない自信が湧いた。
バルセロナへ行ったある年のこと。
ファッションに興味のあった下地さんは、旅仲間でもある小学校からの友達と共に、日本人が経営するセレクトショップに立ち寄った。そのお店は、パリコレブランドを取り扱っている人気店。沢尻エリカやユマ・サーマンなど有名人も訪れていた。
その日、お酒好きの下地さんは、オーナーと飲みにいき、連絡先を交換した。日本へ帰国して数カ月経ったある日、一通のメールが届く。セレクトショップのオーナーからだった。
「ビザ出すからバルセロナで働かない?」
日本から雇用する予定だった人物が失跡したため、下地さんに声をかけてきたのだという。うろ覚えながら、バルセロナで飲みにいった際、「海外で働きたいんです」と酔っ払いながら語った記憶がある。それを覚えていてくれたのだろう。オファーの理由は「辞めなさそうだから」。
23歳の下地さんは、考える間もなく「はい」と返信した。念願の海外移住が、思いがけず叶った瞬間だった。
2010年、バルセロナでの新しい生活が始まった。
飲みニケーションで見えた未来の自分
当時の月給は、日本の初任給の半分ほどで、休みはなし。
「若かったというのもあって、給料はあんまり気に留めていなかったです。別にいいやと思って。一晩20ユーロ(約3200円)くらいで飲める時代だったので、20ユーロ握りしめて料理人をやってた友達としょっちゅう飲みにいって。仲良くなった人たちと日本食パーティをしていました」
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