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「高校野球マンガ」50年の大変化に納得の理由 「プレイボール」「おおきく振りかぶって」そして令和は?

東洋経済オンライン / 2024年9月1日 13時0分

しかし、同作が斬新だったのは、キャラよりも競技としての野球そのものの描写が、極めて詳細かつ理論的であるということだ。たとえば、野球中継でよく言われる「ストレートがシュート回転する」とはどういうことかも、このマンガを読めば理解できる。トレーニングも科学的で、昭和の猛特訓とはまるで違う。

ストーリー的にも、ライバル対決で盛り上げるのではなく、メンタル面のケアや捕手のリードと投手の関係など、従来の野球マンガでは省かれていたものが、むしろメイン。選手のみならず、サポートするマネージャー、スタンドでのブラスバンドや父兄の応援の様子など、周辺状況も極めてリアルに描かれている。

心身ともに未熟な高校生が、野球選手としてのみならず人間としていかに成長していくか。選手同士の信頼関係がプレーにどう影響していくか。3年間という限られた時間の中で何をどうすれば最大限の結果が得られるか。全力で考え、努力する彼らの姿には目頭が熱くなる。

ひぐちアサ氏は、センシティブな恋愛ものや家族ものを描いていた作家だが、以前から高校野球が大好きで、長年取材を続けていたという。その成果と、持ち前の繊細な心理描写が相まって、従来にない野球マンガが誕生した。

試合場面においては、打者一人一人、一球一球の意図まで丁寧に描くため展開が遅くなるきらいはあり、連載開始から(休載期間を含め)20年以上を経てもまだ完結していない。2024年8月現在で単行本は36巻。イチから読むにはちょっとひるんでしまうボリュームだが、読み始めたら止まらない。2006年には第10回手塚治虫文化賞(新生賞)も受賞。現在に至るまで、スポーツマンガで同賞を受賞したのは、この作品のみである。

令和の名作『ベー革』

そして、令和の今読むべき最先端の作品が、クロマツテツロウ『ベー革』(2021年~)だ。タイトルは「ベースボール革命」の略。部活としての野球部の日常をリアルかつコミカルにつづった『野球部に花束を』(2013年~17年)、プロ野球スカウトを主人公にした『ドラフトキング』(2018年~)などで人気を得た作者が満を持して放つ理論派高校野球マンガである。

兄が果たせなかった甲子園出場をめざし、入来ジローが入学したのは(兄とは違う)私立相模百合ヶ丘学園(通称:サガユリ)。若い乙坂監督の就任以来、神奈川県大会ベスト8の常連となり、直近の夏にはベスト4入りを果たした新鋭強豪校だ。

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