セリア「大量閉店」報道めぐる反応に覚えた違和感 「円安がすべての元凶」言説は理解が浅すぎる
東洋経済オンライン / 2024年9月4日 8時0分
本文中にある、「収益性」とは利益のことではなく売上等を指すから、規模が上限にきていると危機感を持っているのは明確だ。だから各社とも他価格帯に手を伸ばしている。そのうえで、自社は拡大せずに100円のラインナップを充実させたほうが、100円にかぎって他社からシェアを奪取できるとしている。
なるほど、これは単純に差別化戦略といってもいいし、「Focused Cost Leadership Strategy(特定価格リーダーシップ戦略)」に特化したものと評価できるだろう。
次に、業績と出店・閉店の実態を見てみよう。
【業績】
2023年3月期
売上高:2123億円、営業利益:154億円
2024年3月期
売上高:2232億円(前年比+5.1%)、営業利益:151億円(前年比▲2.1%)
【出店・退店】
2023年3月期
出店:132、退店:47
2024年3月期
出店:133、退店:71
以上の状況だ。
セリアの経営は失敗しているか?
ところで、セリアの経営を問題視している人たちは、利益が減少していることを問題視しているらしい。さらに、退店が昨年を上回るペースで進んでいることも指摘している。
しかし、それらの指摘については「はあ……」という感想しかない。営業利益率は6.7%出ている。なお、同業者でいえばキャンドゥの2024年2月期は営業利益率が0.3%だった。さらにワッツの2023年8月期は1%だった。ここから見ても、一部が騒ぐほどセリアに問題があるようには見えない。
次に、じゅうぶんに健闘しているように見えるセリアだが、この減益が巷間でいわれる円安が原因かどうかだ。
セリアは売上原価率で見れば、10年分の推移を公開している。10年前の2015年3月期では約58%、これが2024年3月期では58.7%に上昇している。もちろんこれを見て「上がったじゃないか」と言われればそうだが、この差異をもって理由とみなすのは強引ではないだろうか。
もちろん私は円安がなんの影響も与えていないとは言っていない。影響はある。ただ、利益の悪化原因は地代家賃の上昇と給与手当の増加。この2つの合計が大半の理由を占めている。
よって客観的に見ても「100円ショップで、100円だけの商品を販売することが商売として成立していない」とか「円安がすべての元凶」とかいった言説は言いすぎか、あるいは、印象論にはまっていて決算書や他社状況を調べていないだけのように感じられる。
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