今なお残る「富士重工製の鉄道車両」一族の系譜 2003年生産終了、独創的技術生かした気動車も
東洋経済オンライン / 2024年9月5日 7時30分
さらに保守用の軌道モーターカー、貨物輸送用コンテナなども引き受けており、電車では生産拠点の近くを走っていた東武鉄道の8000型や10000型などを製造した。
しかしながら最大の顧客だった国鉄は、年々赤字が膨らんでおり、1980年には輸送密度の低い特定地方交通線をバス転換や第3セクター化すると発表した。
受注が減少していた富士重工業は、第3セクターに新たな挑戦の場があると考えた。そこで1982年に発表されたのが、LE-Carと呼ばれる新世代レールバスで、Lはライト、Eはエコノミーの意味を持たせていた。
「1980年12月、当社は若手技術者を集めてレールバス開発プロジェクトを立ち上げたが、そこでの開発目標は、国鉄一般気動車の3分の1という従来の延長線上では不可能と言われるものだった。そのため、車体・内装はバスボディを使用、下回りは1軸台車を中心として小型軽量化を図ることとし、エンジンをはじめとする主要部品は、極力、量産されているバス・自動車用のものを採用する方針をとった」(富士重工業50年史)
富士重工業はかつて、青森県の南部縦貫鉄道などへ車両を供給していた。バスと鉄道の両方の経験を持つという特徴を生かせるジャンルといえた。
各地の3セクで導入
当初は1軸台車だけだったが、定員増加を望む声があったことから、ボギー台車を採用した車両も加わり、全国各地の第3セクター鉄道に導入された。
さらにこの経験を生かして、一般の鉄道車両に近い軽快気動車LE-DCも開発された。車体構造は鉄道車両のそれだったものの、エンジンなどはバスの部品を転用していることが特徴だった。
富士重工業の生産拠点がある群馬県や栃木県を走るわたらせ渓谷鉄道も、LE-CarやLE-DCを導入した。理由について同社営業企画課は「ドアやクーラーなどにバス用部品を多用し製造コストを下げた第3セクター向けの軽快気動車を富士重工業が製造し、多くの会社が採用していたため決定した」と説明する。
一方で自動車分野における水平対向エンジンや運転支援システム「アイサイト」のような、独創的な技術を生かした車両もあった。世界初の制御付振子気動車となったJR四国2000系はその1つだ。
気動車の高速化ニーズに対応
国鉄分割民営化によって生まれたJR四国は、高速道路網への対抗として高速化を考え、いくつかの車両メーカーに打診した。その中から富士重工業の提案が採用され、JR四国および鉄道総合技術研究所との共同開発がスタートしたという。
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