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ヨーカドーが「第2のライフ」には多分なれない訳 「消費者を見ない姿勢」は変化の妨げになる

東洋経済オンライン / 2024年9月5日 8時0分

では、ヨーカドーにこうした「消費者ありき」の発想があるかというと、疑問符が浮かぶ。

以前私は、東京23区にあるヨーカドー全店をめぐり、実際の店舗の様子をレポートしたことがある。そこで目にした光景は、ヨーカドーの「消費者不在」あるいは「現場不在」とも見える店舗づくりだった。

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例えば、現在ヨーカドーではDX化の名の下に、セルフレジの導入を進めているが、その顧客層の多くはシニア層。セルフレジへの忌避感があるのか、少ない有人レジに並び、大行列ができているさまが見られた。

また、一部店舗では、店内レイアウトの改革が進められており、ジャンルごとに商品を分類する棚から「家事をする」「毎日をサポートする」「身なりを整える」というように、機能で商品が分類されている。

しかし、「家事をする」の棚を見ると、時計やライト、マウスなどがあり、正直「家事をする」という棚から、こうした商品を見つけるのは難しい。生活の場面ごとに商品を提案する売り方は、近年の小売りでは主流の一つだろうが、結果的にそれが消費者のメリットにつながっていないことが見受けられたのだ。

陥りがちな「内側の論理」のワナ

ライフがするりとやっている「消費者を見る」ことは、ヨーカドーの例を踏まえても、意外と難しいのかもしれない。

実はこうした点は、決してヨーカドーだけの問題ではない。小売業全体の問題でもある。『誰がアパレルを殺すのか』(杉原淳一・染原睦美、日経BP)では、かつて「作れば売れる」ものだったアパレル業界において、その成功体験から抜け出すことができず、消費者のニーズを見ることなく目先の利益に縛られて自滅していくアパレル業界のありさまがリアルに描かれている。業界内部の「内側の論理」だけで動いているのが、アパレル業界だというわけだ。

ヨーカドーも似たところがある。

かつて、アパレルがなんでも作れば売れたように、GMSでは「モノがあれば、売れた」。高度成長期の名残を残しつつ、内需が拡大し続ける時代、多種多様なモノがあることそのものが、一つの強みになったのだ。

しかし、郊外において大型量販店が多数出店したことや、ECの発達により、「モノが手に入る」ことはそれほどの価値ではなくなった。そうではなく、どれほど消費者個々人に深く「刺さる」かが、その店の価値を決定するようになる。これはヨーカドーだけでなく、GMS全体に対して「なんでもあるが、欲しいモノがない」と言われることに象徴されるように、ただモノがあるだけで、それが顧客の興味を引かなくなってしまったのだ。

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