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NHK「受信料バブル」から1000億円削減への不安 「中国籍スタッフの不適切発言」はなぜ起きた

東洋経済オンライン / 2024年9月5日 14時0分

言ってみればNHKはこの10年間ほど「受信料バブル」に沸いていたのだ。自分たちの努力というより、地デジ化で多くの家庭の受信形態が変わった結果のあだ花的な収入増だった。

2020年以降の「テレビ離れ・NHK離れ」

ところが2020年以降、急激に事業収入が下がっている。まるで「バブルが弾けた」ようにどんどん下がった。「テレビ離れ・NHK離れ」が始まったのだ。なのに、2023年度は受信料を値下げした。約1割というインパクトの大きな下げ幅だ。事業収入のダウントレンドに弾みがついてしまった。

前会長の前田晃伸氏が実施したのがこの大幅値下げだ。ただ、前田氏が行ったというより、自民党が下げさせたというべきだろう。2021年に菅政権が値下げを宣言し、武田総務大臣がNHK予算案に意見をつける形で値下げに言及した。NHKに意見を述べるのは介入ではないと2022年2月2日の会見で武田大臣は述べているが、介入かは別にして総務大臣が言ったらNHKは従わないわけにはいかないだろう。菅-武田ラインで携帯電話料金を下げて国民にウケた流れではと見る人もいた。

前田会長も経費削減に積極的だったこともあって、2023年度に大幅値下げが実施された。そのせいでこの年度は136億円の赤字になっている。

自民党に値下げを強いられNHK会長もそれを受け入れて実施したが、赤字になった2023年度は岸田政権に代わっており、会長も稲葉延雄氏になった。NHKという公共放送が赤字になった責任を誰も取らないのはどうなのか。運営の原資は我々が払っている受信料なのに。

そして稲葉会長の下でこの春、2024年度から3カ年の経営計画が発表された。2023年度に続いて毎年赤字という前代未聞の計画だ。受信料収入の下降トレンドは止まらず、それに対応すべく2027年度までに1000億円も支出を減らすという。6000億円規模の事業体がたった数年間で6分の1も費用を減らすのだ。「受信料バブル」を逆転させるような話だ。普通に考えればあちこちの事業を強引に縮小するだろう。それが各所でガタガタと摩擦を引き起こすはずだ。

ラジオ国際放送の大不祥事は、今後各部門で起こる軋轢の発端かもしれない。岩田氏が言うように、費用削減の影響が及んでの失態と見ていいだろう。国際放送は見直しを図って二度と起きないような策を講じたとしても、似たような不祥事があちこちで起きる可能性がある。

現在のNHK執行部は1000億円の支出削減にビジョンを持って対処できていないのではないか。少なくとも、支出削減にあたり組織をこう変えるとの発表はないようだ。

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