日本で「アニミズム」が保存された3つの根本理由 「自然信仰」を踏まえた「地球倫理」の時代へ
東洋経済オンライン / 2024年9月6日 9時0分
ところで、ドイツの哲学者ヤスパースが「枢軸時代」と呼んだ紀元前5世紀前後の時代に、地球上の各地において、都市文明の成熟の中で高度に言語化され体系化された「普遍宗教」(ないし普遍思想)が成立していった。インドでの仏教、中国での儒教や老荘思想、ギリシャ哲学、(キリスト教やイスラム教の源流となった)中東での旧約思想等である。こうした普遍宗教は、その高度な体系性とも相まって地球上の各地に広がり、浸透していくとともに、各地域にもともとあった土着の信仰を(その“原始的”で“不合理”な性格ゆえに)否定し排除していった。
ところが日本の場合、当初は外来の普遍宗教である仏教と土着の自然信仰ないし神道との間に激しい争いが生じたが、最終的に「神仏習合」という形で両者の融合ないし習合(syncretization)がなされていった。
また、必ずしも神仏習合という形をとらずとも、日本の天台宗において9世紀後半に活躍した安然という仏教学者が提起した「草木国土悉皆成仏」という思想(人間以外の草木や自然もまた成仏するという考え)などに象徴されるように、日本においては仏教そのものが土着の自然信仰とそのアニミズム的要素に(意識的であれ無意識的であれ)影響を受ける形で変容していったのである(安然の思想とその背景については末木文美士『草木成仏の思想』サンガ、2015年を参照されたい)。
以上の内容について、2点ほど補足を行っておこう。1つはいま指摘した日本における仏教の変容という点である。上述の普遍宗教が地球上のさまざまな地域に広がっていく中で、その地域の風土や土着の信仰と相互作用を行いながら、その場所固有の文化に適合的な形で変容していくということは広く見られることであり、日本に限ったものではない。
単純な例で言えば、中東の砂漠周辺で生まれたキリスト教がイタリアなど(風土的にもより温和な)地中海世界に広がっていく過程で、母性的な聖母(マドンナ)信仰が重要な意味をもつようになっていったことなどもそうした例である。そうした意味では日本に渡来した仏教(の一部)がアニミズム的性格を包摂していったことは、ある意味で自然な変容であったとも言える。
もう1点は、「神仏習合」のような現象――外来の普遍宗教が土着の信仰と何らかの形で融合するという現象――もまた、必ずしも日本に限られたことではないという点である。
たとえば北欧のノルウェーには「スターヴ教会」という独特の形状の木造教会があるが――「アナ雪」の映画を通じて日本でも注目された――、これは(外来の普遍宗教である)キリスト教と、北欧の地域固有の建造物が何らかの形で融合したものとされる。
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