日本で「アニミズム」が保存された3つの根本理由 「自然信仰」を踏まえた「地球倫理」の時代へ
東洋経済オンライン / 2024年9月6日 9時0分
ただしこれはあくまで建造物に関するレベルであり、またそれがキリスト教が渡来する以前の北欧の土着の信仰や(hofと呼ばれる)信仰の場所ないし建造物とどのような関わりがあるかについてはさまざまな議論があるが、外来の普遍宗教と土着の信仰とのある種の相互作用を示していることは確かだろう。
地理的に日本により近い例では、東南アジア各地において、普遍宗教としての仏教やイスラム教が他の地域から渡来し広がっていった一方で、自然信仰を含む土着の信仰がなお保存されたり、融合ないし習合しているという例は少なくない(たとえばミャンマーにおける「ナッ信仰」と呼ばれるアニミズム的な土着信仰と仏教との融合などはそうした例の一つである)。
このように、地球上の各地において「外来の普遍宗教と土着の信仰が融合(習合)する」という例は一定程度見られる。しかしその中でも日本における「神仏習合」はかなり明確な融合ケースと言えるだろう。
そして、ここで重要なのは次の点である。すなわち仏教という、高度に体系化・言語化された普遍宗教と融合したことで、日本において原初にあったアニミズム的な自然信仰は(やや俗な言い方をすれば)ある種の“お墨付き”あるいは普遍性を獲得することになり、それによって後の時代まで長く保存されることになったと言えるのではないだろうか。
日本においてアニミズムが保存された背景として「神仏習合」を挙げたのは、以上のような趣旨である。
「ガラパゴス的辺境性」とアニミズム
さて、日本でアニミズム的自然観が保存された最後の要因として挙げた3)「ガラパゴス的辺境性」についてはどうか。
今から約1万年前にメソポタミアを中心に生じた農耕、言い換えれば食糧生産の始まりを受けて、およそ5000年前にメソポタミアで最初の「都市文明」が生まれ、文字、法制度、市場経済、数字、建築・都市計画等々のシステムが人類史上初めて整備されていった。
これに前後してエジプト、インド、中国、ローマなどで同様の都市文明が生成していったわけだが、これらの都市文明圏は、そこにおいてさまざまな民族や共同体が出会う普遍的な交流圏ないしセンターであると同時に、その周辺に“衛星”的な文明圏(あるいは文明圏というより文化的共同体に近い地域)を派生的に生み出していった。
日本はまさにそうした衛星的な文明圏の一つであり、もちろんそれは中国文明に対してその「周辺(または辺境)」に展開したものだった。具体的には(農耕ないし稲作そのものが大陸から移入されたことに続いて)5~7世紀前後を中心に、上記のような都市文明のあらゆる要素(文字、法制度、建築・都市計画等々)が中国から導入されたのである。
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