今さら聞けない「ポピュリズムが台頭する」なぜ そもそもポピュリズムは「悪」なのか?
東洋経済オンライン / 2024年9月6日 18時0分
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、収束が見えないガザ情勢、ポピュリズムの台頭、忘れられた危機を生きる難民……テレビや新聞、インターネットのニュースでよく見聞きする、緊迫した世界情勢。
「論点」をちゃんと答えられますか? 「受験世界史に荒巻あり!」といわれる東進世界史科トップオブトップ講師『紛争から読む世界史~あの国の大問題を日本人は知らない』の著者が、キナ臭さが漂う今だからこそ学ぶべき「世界の大問題」から、今回はポピュリズム台頭の背景について解説します。
2000年代に台頭してきたポピュリズム
アメリカだけではなく、ヨーロッパでも日本でも民主主義のバックスライディングを危惧する動きが2000年代に入ってから見られるようになりました。それがポピュリズムの台頭です。代表的なポピュリズムを列記していきます。
アメリカ合衆国で2016年の大統領選挙に立候補したトランプはメキシコからの移民を犯罪者呼ばわりするヘイトスピーチ、女性を蔑視した発言、他にも多くの放言を行ない、これを多くのメディアが報じながらも当選します。
ブラジルは2019年から大統領を務めていたボルソナロがポピュリストとして知られています。LGBTQの人々の権利を認める法律を議会が認めても反対し、先住民や黒人、移民についても差別的発言を連発しています。
ヨーロッパのポピュリストとして筆頭に挙げられるのは、「フィデス」という政党を率いるハンガリーのオルバーンでしょう。イタリアで初の女性首相となったジョルジャ・メローニは「イタリアの同胞」という極右政党を率いています。また、ドイツでは反移民・難民を訴える「AfD(ドイツのための選択肢)」が議会第三党にまで成長しています。
ポピュリズムが初めて「登場」したのは?
では、ポピュリズム概念について最低限のことを確認しましょう。
まずポピュリズムの語が世界で初めて登場したのは、19世紀末のアメリカ合衆国でした。アメリカ西部の農民が起こした政治運動でポピュリストを名乗る人々が現れます。彼らの主張は東部エスタブリッシュメントへの批判でした。
当時のアメリカは産業革命の進展で工業化が進んでいましたが、西部で生産される小麦は都市への食糧供給として重要さを増していました。しかし、農産物を都市へ運ぶための鉄道運賃を高く設定され、農民の手取りが少なくなることへの不満が政治運動につながったわけです。
民主党と共和党という現在まで続く2大政党は、こうした農民の窮乏に耳を傾けなかったのです。そして1892年の大統領選挙に出馬したポピュリスト党は10%弱の得票率と善戦しました。結局はポピュリスト党の主張を民主党が取り入れたことで、この運動は短命に終わります。
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